こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

Abnormal Psychology 異常心理学

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異常心理学は異常行動(abnormal behavior)について学習されます。
異常行動とは言わずもがな正常な行動から逸脱している行動のことですが、さて、問題は正常/異常をどこで分けて線を引くのかということです。
異常を精神病理学的に判断する場合では、苦痛・逸脱・機能不全・危険性が評価対象となります。
しかしながら、逸脱度を測るのに統計が示す標準を基にしても、この標準は時代や地域で変化してしまうというブレが生じます。このため、異常行動の理解・説明には文化を考慮する必要が大いにあるわけです。


Contents
異常心理学では、具体的にはthe Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神障害の診断と統計マニュアル:DSM)に記載される各精神障害の診断症状・原因・治療と、これ以外の異常行動の特徴が学習されます。焦点が当てられる精神障害は以下となります。


History
太古の昔から、コミュニティーの中には皆と少し変わった行動や態度をしめす者が存在しました。科学や研究のない頃では、こういった者たちの行動を超自然で説明(納得)しようとしました。石器時代には、頭に穴を開けて(trephining)、そこから悪い霊を逃がすことを治療としていました。ギリシャ・中国・ヘブライ・エジプトの民は異常行動者に嘔吐をさせたり、食べ物を全く与えないなどをして悪霊退散の儀式(exorcism)を行ったのです。
時代が進むと、超自然から自然へと説明が変化します(naturalistic explanation、ここであげる時代のものはGreco-Roman Thought)。ヒポクラテス(B.C.460-379 )は、「逸脱したふるまいは脳病理が起因しているのだ」、「心理病理学においては遺伝と環境が重要な要素である」、「症状は①躁(mania)②憂鬱(melancholia)③脳熱(phrenitis)の3つに分けられる」と説きました。彼の考えはWilliam Griesingerに引き継がれ、更にEmil Kraeplinに継がれて診断マニュアルであるDSMが誕生します。
ヒポクラテスの他にもプラトン( B.C.429-347)が、「精神障害は家族が関与するものである」としたり、ガレン(A.D. 129-200)が神経組織の科学的説明を行うなど、この時代の精神障害に対する観点は現代の研究の基盤となるものになりました。
ところが!中世(5c-15c)、ローマ帝国が崩落するとキリスト教が権力を増し、「自然とは"神"の意に他ならない」という論を説きます。それ故、精神障害はまたしても逆戻りの『悪霊』のせいとされ、悪霊退散の儀式が復活してしまうのです。科学的な学問は絶対的な『神』の存在を脅かすものなので、科学者は迫害された時代です。
15c-17cになると考えはエスカレートし、異常はもはや『悪魔』がとり憑いて起こる現象だとされました。望んでいないのに行動が逸脱していると取られる者は罰当たりな人生を送っているための戒めであり、望んで逸脱行動を取る者は悪魔と結締を交わした者であるとされたのです。更に、異常精神者はおかしなことを言う『魔女』であるとし、魔女狩りが横行。精神疾患者は化け物扱いされた時代です。
そんな中でも、14c頃から芽生え始めたヒューマニズムが少しずつ少しずつ前進していきます。ヒューマニズムとは人間の価値や個人個人の特異性などを大切にしようとする哲学的な運動のことで、18c-19cの道徳的治療運動へつながっていきます。そこから更に多分野において研究が進み、異常行動や精神疾患についての理解や治療法が発達していきます。

参考:Understanding Abnormal Behavior, Stanley Sue et al., 2008


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