米合衆国大統領にはならなかったものの、物理学者で政治家だったベンジャミン・フランクリンは米国の100ドル札になっている人です。
政治家は人々からの支持が必要ですが、人格とか貢献とかを取っ払っても支持を得られる方法はあるのかしら?
「あります。」と心理学は言います。
人は誰かを助けるとその人に好意を持つという現象があり、ベンジャミンが政治活動で使った戦法だったことからベン・フランクリン効果(Ben Franklin effect)と呼ばれます。
ベン・フランクリン効果とは、助けてくれた人を好きになるのではなく、助けた人を好きになることです。助けたのに好きになる・・・理解が少し難しいですね。
これは前回記事にした、「自己の物事に対する態度(思考・感情)とそれに取り組む行動が一致しないとき(認知的不協和:cognitive dissonance)、人は不快さやストレスを感じるようにできている」というのがからくりとなっています。
つまり、この効果の基となっているのが私たちの筋が通らないことに納得いかない・気持ちが悪いと感じ、これを解決しようとする習性だということなのです。
それでは、流れを見てみることにします。
- 助けるという行動を先に起こしてしまいます。
- もし、助けを施す対象が特に仲良しではない人だったら、認知的不協和が起こります。「なんで助けなきゃいけない?」という困惑思考の発生です。
- 脳は困惑による不快さとストレスを取り除く作戦を練ります。 <<もう既に行動は起こした後なので、まだ流動的な思考の方を行動に寄らせるしかありません。>>
- 「助けてあげる程の好意をこの人間に持っている自分に違いない(ということにしよう)」というように感情付けと理由付けをすることで帳尻を合わせ(正当化)、心と行動が一致します。
- 認知的不協和は解消し、不快とストレスが取り除かれます。
- 産物として残ったもの=好意
という風になります。
学術的に言うとこんな面倒な説明になってしまうのですが、ちょっとだけ預かるつもりが情が移ってしまって飼うことにする猫との関係と同じことです。
更には、「手がかかる子ほど可愛い」と言われるのもこの効果で説明がつくものと思われます。
そして理論上、少し冷たいような距離を感じる相手と付き合うこと、あるいは営業などでお客様の心を掴むことにこの効果が使えるとなります。
「どうすればいいですかね」などの質問をするのも助けを乞うことと同じですので、一人でバリバリ淡々とやるより、甘え上手な人が可愛がられるのが納得いくのではないでしょうか。放って置けない存在になります。
あるいは、「母性本能をくすぐる」という感覚も甘えられて助けることで好意が湧くものと考えられます。
さりとて、仏頂面で横柄にヘルプを出したり、年がら年中全てを人任せにしたり、そもそも近寄るのもおぞましい体臭・口臭を出していたりすれば助けてもらうことを拒否されて好いてもらうこともできません。やはり、スッキリ、ニッコリは大事だと思われます。
見掛けによる人を惹き付ける力で話を聞いてもらえる件については、説得力の心理学をご参照ください。その他惹き付ける力は人間関係のページにリストアップしてあります。
男女間恋愛対象としての魅力に関しては更に恋愛関係のページで説明致します。
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こちらの記事は2013年11月27日発行分を編集し直したものです。