こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

Alcohol Use 飲酒

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日本では古くから『酒は百薬の長』と言われ、健康食品の一つとして数えられてきました。また、日本酒はお清めの際に使われたり、結束の儀式の際にも使われるなど、文化的に私たちととても深い関係にあります。そのためお祝いの際はもちろんですが、グループ内で新しい者を迎え入れる時も、それまでいた者を送り出す時もお酒を囲むことが多く、人間関係にも影響します。
そんな社会律の中、一気飲みを強要されて急性アルコール中毒を起こし死亡するなどの現象が問題になり、「俺の注いだ酒が飲めねぇってのか」的なプレッシャーはハラスメントとして認識されるようになりました。更に「大人なら苦いビールを飲む」とか、「男なら飲めて当たり前」などのステレオタイプも薄れたため、個人の飲む・飲まないの選択が確立されました。
その流れからか、厚生労働省によって行われている調査(平成元年より)の全体平均を見ると、飲酒習慣率は男性で減少しているのに対し、女性では増加しています。飲みすぎによる健康被害への懸念はもちろんのこと、女性は男性に比べて少ない量と期間でアルコール依存症になりやすい傾向があるため、飲む人の場合はお酒と身体のことについて理解し、酒という薬を毒にしないことが大事です(女性への影響参照)。
なぜ二十歳からでないと飲酒が認められないかについての根拠はHuman Brain:脳のページで説明します。


How Much Is "Moderate Amount"?  - "適量"とはどれくらいを言うのか -
お酒を手に取ると、容器に「度」とか「%」が表示されていることに気付きます。ウォッカ・ウイスキー・テキーラ・ジンなど外来の蒸留酒(spirits)だと「proof(プルーフ)」とも書いてあり、何しろ数字が高い程アルコール成分が高いのだろうとくらいしか気にしません。しかしここでは"適量"を理解したいので、これらの違いを明確にしたいと思います。

まずパーセンテージですが、ビールやチュウハイなどの容器に「アルコール分」として表示されていると思います。これは一定量全体に対するアルコール量の割合となります。全体量・アルコール分・比重を掛けて純アルコール量(g)が算出されます。1缶350mlのビールだとおよそ14gの純アルコール量が含まれていることになり、アメリカではこれを1ドリンクとし、基準飲酒量(standard drink)と言います。
日本では日本酒を基準にして基準飲酒量を20gとしてきましたが、高すぎだということで1ドリンク=10gという基準が提案され(いきなり半分!)、使用されているそうです。(参考:厚生労働省-アルコールの基礎知識
次に「度」ですが、これは「%」と同じ意味となりアルコール度数を表すものです。よって、ビールは「アルコール度数5度」と表示するか、「アルコール度数5%」と表示するかは販売元次第ということになります。
「プルーフ」は「度」もしくは「%」のアルコール度数を2倍した数になっています。つまり、90プルーフのウォッカはアルコール度数45度ということになります。

ビール・発泡酒(5%)250ml中瓶・ロング缶の半分
チュウハイ(7%)180mlグラス1杯または350ml缶の半分
焼酎(25%)50ml
日本酒(15%)80ml0.5合
蒸留酒(40%)30mlシングル(ショット)1杯
ワイン(12%)100mlグラス1杯弱
上で述べたように、日本での1ドリンク=基準飲酒量は10gで、それに相当する飲料全体量を厚生労働省がまとめたものです。括弧内はアルコール度数を示しています。

以上までがアルコールの基準量の説明でした。この基準を素にして、どれだけの量が"適量"になるのかを理解したいと思います。
厚生労働省男性で一日20g(2ドリンク)とし、飲む日数についても制限のガイドがないので、1週間の適量は「2ドリンク×7日=14ドリンク」ということになります。ビールにすれば一日500ml缶1本、チュウハイなら350ml缶1本が"適量"となります。女性ではそれより低い量が望ましいとしか指示がなく、具体的な数字が提示されていません。
一方、アメリカのNational Institute of Alcohol Abuse and Alcoholismは男性の場合1日に4ドリンク以下で1週間で14ドリンクを越えないこととしており、1日の上限量は日本より上回りますが、1週間のトータルにすると同じ量になります。女性では1日に3ドリンク以下とし、一週間で7ドリンクを越えないよう明確な指示があり、男性に比べると1週間のトータルは半分となります。
休肝日の推奨や女性の飲酒が増加していることを考えても、労働厚生省はNIAAAに見習った具体的摂取量を提示するべきだと考えます。


Blood-Alcohol Concentration  - 血中アルコール濃度 -
一旦お酒を飲み始めると、アルコールは急速に(20%は胃・80%は小腸から)血中へと流れていきます。効果は5-10分程度で現れ、気分の良さにグラスが進むと血液に混ざって体内に駆け巡るアルコール分が分解に間に合わず蓄積していくのです。
アルコールの90%は肝臓で代謝されます。毒物は水分へ、そして二酸化炭素に分解され、残りは肺へ流され呼吸として、腎臓へ流され尿として体外へ排出されます。この仕組みから血中アルコール濃度(blood-alcohol concentration: BAC)は呼吸や尿から測定することが可能になるのです。

ほとんどの人口は1,2ドリンクでリラックス感・快楽感・幸福感などのよい気分を味わいます。はずかしさも消えて社交的になり、ユーモアも飛び出します。この時点ではBACは0.05程度です。
0.06-0.08になってくると判断力が衰えてくるので、危険を伴うようなことをしがちになります。例えば、酒の勢いで余計なことを言ってしまうなどの行為です。また、話し方・視覚・聴覚・情報処理・反応時間などに多少の支障が見え始めます。濃度が上がるにつれ、陽気な気分はだんだんと陰気になっていきます。
0.08-0.1になると反応時間は遅くなり、もはや色の識別も難しくなってきます。記憶にも欠陥がでます。
0.11-0.2になると声が大きくなったり、感情のアップダウンが出ます。怒ってみたり、泣いてみたりという行為を見せます。話し方・視覚・聴覚・情報処理・反応時間は更に悪化します。吐き気をもよおす場合もあります。
0.2-0.3では物事の理解は不可能になり、記憶は機能しなくなるので、「あの時ああいった」的なことは次の日となれば全く覚えていません。むしろ一度席を立ったら戻る場所を思い出せなくなるほどです。気を失う場合もありますが、立ち上がれる場合でも人の手をかりないとうまく歩けない程に動作の整合力を失くします。吐き気の他、眠ってしまって起きない、尿意の管理ができないなどの症状が見えるようになります。
0.3-0.399は中毒状態で、気を失います。膀胱機能・呼吸・心拍・体温などに問題を起こし、医療介入が必要となります。
0.4+では昏睡状態に陥り、呼吸や心拍など全ての機能が鎮静状態となって死亡する可能性があります。 参考:University of Notre Dame

いくらかの人口では低いBACでも頭痛・胃もたれ・めまいなどを経験しますが、これは生まれついてアルコールを分解する酵素が少ないために起こる反応になりますので、無理は禁物です。また、疲れが溜まっている人・持病がある人・お年寄りはアルコールの耐性が低く、少しの量でも不適切な反応を見せることがあるので注意が必要です。
上で出てきたように、飲みすぎると中毒(intoxication/poisoning)の状態になります。中毒症にかかっている人がそばにいたら横向きに寝かせて嘔吐が気管に入らないようにし、なるべく頭が低くなるようにしてください。患者はショック状態に陥ると脈が弱くなったり、呼吸が不規則になったり、肌の色が変化するなどの症状を出します。この場合は命にも関わる事態なのですぐに救急車を呼んでください。


Effects of Alcohol  - アルコールの影響 -
適量を超えなければお酒は健康にメリットがあると言うことが、古い言い伝えの域を超えて科学的に研究・証明できる現代です。これまでのところ発表されているものをリストアップしてみたいと思います。
  • 心血管疾患の防止
  • 寿命を伸ばす
  • 免疫機能の向上
  • 認知症発症の減少
  • 糖尿病発症の減少
  • 鬱の抑制(ワイン)
  • 癌の抑制(ワイン) これから先も、適量摂取がもたらすアルコールのメリットについて発見が出てくると思いますが、研究者ならびに専門家は、"たとえ適量に健康的メリットがあるとしても、過去にアルコール乱用およびアルコール依存症を経験したことのある個人はアルコールを健康法の一つとして利用することのないように"、と強く念を押します。(参考:MNT

    そして、以下はアルコールによる疾患および悪影響です。
  • 肝臓 - 肝脂肪・肝炎・肝硬変などを引き起こす可能性があります。
  • 心臓 - 心不全や高血圧などを引き起こす可能性があります。
  • 免疫 - 免疫力を下げるため、各種伝染病にかかる率を上げます。
  • 生殖 - 女性では月経周期が不定期になったり、男性では男性ホルモンの量が下がり勃起不能を引き起こしたりします。
  • 脳 - 脳細胞にダメージを与えたり、完全に破壊してしまうこともあります。そのため、記憶障害がおきたり、よく鼻が利かないなどを始めとした感覚のにぶりが治らなかったり、手がふるえるなどの動作の支障があらわれます。


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    参考:
    Drugs, Society, and Human Behavior, Carl Hart et al. 2009
    Medical News Today 2003

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