こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

Sensation & Perception 感覚と認識

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感覚機能の学習も心理学の一つです。主に行動脳科学認知心理学で取り上げられます。
私たちの感覚器官は刺激(stimulus/stimuli)を受けて感じます。これが感覚および知覚(sensation)です。受けた刺激は情報として神経を伝わり脳へ運ばれると処理がなされて把握を試みます。これが認識(perception)となります。
感知はできても認識ができなければ、ただしく情報を把握することができません。私たちは目・耳・鼻・舌・肌の各器官を相互的に機能させ、情報の把握を試みています。これは目隠しをして鼻をつまみ口に入れられた食べ物を当てる、のようなゲームを行うとよくわかると思います。食感や味覚は機能しても、鼻から風味が目から画像が入らないと似通った食物と識別が難しくなりますね。
これら一般に知られている視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚以外にも本来はまだ存在します。動物により機能が異なり、また、進化の過程で調整されていきます。人間の場合は嗅覚が最も重要な機能でしたが、直立を果たしてからは重要性が視覚へ移行し発達していったとされます。

特定の昆虫・鳥・爬虫類は、人間にとっては不可視光線である紫外線を認識します。これにより、彼らは花など私たちとが見るのとは違う色や模様を見ています。これは花が裏表を変えているならなのではなく、見る側の認識 "perception" の違いによるものです。花は全身を使って自己の情報を表現します。蜂は紫外線を使うことで花が表現する蜜の情報を読んでいるのです(Genetic Archaeology)。
物体は見た目・匂い・味・音・肌合いを使ってメッセージを表現し、私たちはこれらを各感覚器官を通して認識するのです。ちなみに、コミュニケーション学ではこれらは非言語コミュニケーションの要素とされます。
このことは更に恋愛感情として起こる惹き付け合い、魅力の感知に関わってきます(Romantic Relationship 恋愛関係参照)。
ここでは味覚の一部と触覚について少し触れますが、これら以外は各ポストで紹介することにします。


Decoding Taste of Food - 味の解読 -
ここでは味覚についてを付け加えておきたいと思います。
私たちの舌には味をメッセージとして取り入れるためのセンサーがあり、味蕾(みらい)と言います。味蕾は甘味(sweetness)・塩味(saltiness)・苦味(bitterness)・酸味(sourness)・旨味(umami)に反応します。味がメッセージって、どういうことなのかしら?ということですが、

  • 甘味は脳を含める身体全体が使う熱量となる糖質を含むこと
  • 塩分は神経細胞の機能および生理機能に必要な電解質(electrolytes)を含んでいること
  • 苦味は毒を含む危険性があること
  • 酸味は食物が腐敗していること
  • 旨味は身体を作るたんぱく質の最小ユニットであるアミノ酸を含んでいること

  • を伝えます。
    離乳したばかりの赤ちゃんは、苦いものや酸っぱいものを口にすると反射的に顔を崩し、拒否反応を示します。このことから味のメッセージ解読が生得的であることがわかり、ピーマンや玉ねぎが子供に嫌われる理由となります。年齢と経験を重ねていくと、苦味や酸味が必ずしも摂食に危険があるわけではないことを学習し、食べられるようになります。
    ただし、味の感知度は人それぞれ異なります。平均的な感知能力を持つ人は"regular taster"と呼ばれ、人口の50%ほどだとされています。25%は"nontaster"と呼ばれる、いわゆる味盲の人口です。残りの25%は"supertaster"と呼ばれ、人よりも味の感度が高く、よって苦味や酸味が苦手になりがちです。コーヒーが飲めなかったり、グレープフルーツは嫌いだったりします。ちなみに、辛さは味ではなく「痛み」としての感知となります。

    人間は味を解読すると、それを周りのものに表情変化を使ってコミュニケーションを行います。甘いもの、塩気のあるもの、うま味のあるものは生命維持に有益であり、口に入れると「おいしい」という喜びの感情が生まれ、口角が上がり瞳孔が開きます。これにより仲間に食べるべきを知らせることができます。一方苦味や酸味では、顔をくしゃっとさせて危険性を示し食べるべきではないことを伝えることができるのです。これらの素直な表現は近い関係の者の生存を促す行為であり、"血縁選択:kin selection"と呼ばれます。敵を欺く場合でも、毒入りワインを喉へ流し込むことを促すのに、むしろ言葉よりは表情で安全性を訴えた方が疑われないですよね。

    食物の温度による味覚の変化はこちらで説明します。


    Summary of Somatosensory System - 体性感覚の概要 -
    "somatosensory system:体性感覚"と呼ばれるものを整理します。

    touch sensitivity:触覚 --- 代表的な測定は二つあります。
    一つは圧力に対する感受性(pressure sensitivity)で、医者がボールペンで人の手や足に圧を加え「これ感じますか?」と聞くものです。
    二つ目はtwo-point sensitivityと呼ばれる、刺激場所の特定に対する感受性です。二つの離れて触られている点が一つになるまで距離を縮めていくという測定を行います。この感度が高い場所は必ずしも圧への敏感性が高い場所とは限らず、two-point sensitivityが高いところは指先ですが、圧力感覚の敏感性は鼻が一番高いです。
    触覚にはこのほか肌触り(texture)や振動(vibration)の感知が関わります。

    thermal sensitivity:温度覚 --- 冷たい・温かいを感知します。人間は冷たくされている・温かくされている場所の特定が下手なのだそうです。

    pain:痛み --- 脊髄にある神経伝達物質の「P物質」が作用しています。痛み止めに含まれる成分はP物質をブロックします。エンドルフィンは自己の体内で放出されるモルヒネで痛み止めとなり、笑うと出てきます
    私たちは内臓の痛みはピンポイントで抑えることが難しいことになっています。
    触覚からくる刺激感知(nociceptorsの作用)があると、脊髄が起こす(nociceptorsの作用)痛みに対する反応が軽減されるとされます(gate control theory)。痛いところを反射的にやさしく撫でたくなる気持ちが説明つきます。

    体性感覚は以上肌を通してだけでなく、筋肉及び腱にも受容体が存在します。 ここいらは筋肉の専門家にお任せすることにして、とりあえずはページをここまでとすることにします。

    嗅覚については男女交配相手の選出、記憶などに深く関与していますので、詳しく個別に記事で取り上げることにいたします。


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    参考:
    A Guide to Psychobiology, Henry Heffner 2011

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