
神経に関わる解剖学は、neuroanatomy(神経解剖学)と呼ばれます。
ここではまず身体全体を作る構成から並べて神経を少し説明しますが、非神経細胞や活動電位の化学については後にします。
尚、配偶子という一つの細胞から一個体となって出産になるまでの生物学的発達に関しては、既にポストにありますのでそれぞれご参照ください。
これまで人間ひとりは60兆個の細胞でできているという話だったのですが、2013年の研究で37兆個という新しい見解が発表されました。どちらにしても沢山あるということには変わりありませんけども。
受精からまもなくのうちに増える細胞はまだどの器官になるか決まっていない初期細胞であり、どこにでも行ける幹細胞(stem cells)です。受精から3週間ほどのまだ胚(embryo)の時なので embryonic stem cells(ES細胞)とあえて呼ばれることもあります。これらの幹細胞は受精17日目までには、それぞれはまるで意志を持ったかのように自分がどの組織に所属するかを決めていきます(細胞分化:cellular differenciation)。
所属する派閥を決めた細胞たちが種類を共にし出来上がるのが組織(tissue)です。まるで、人体自体が社会であるかのようです。
組織は更に結託して器官(organ)を作り上げます。例えば、心臓という器官の完成です。
立ち上げられた心臓は関連するまた別の器官である血管と結びつき、系(system)を敷きます。このようにして、他の器官もそれぞれ以下のような系を作ります。
循環器系(circulatory system/cardiovascular system)
神経系(nervous system)
呼吸器系(respiratory system)
消化器系(digestive system)
骨格系(skeletal system)
筋系(muscular system) *骨格と筋肉はくっついて運動器系(musculoskeletal system)として扱われることが多くあります。
これらの他、外皮系(integumentary system)・ 感覚器系(sensory system)・ 泌尿器系(urinary system)・ 生殖器系(reproductive system)・ 循環器系に含まれているリンパ系(lymphatic system)などが機能して、生物の1固体(organism)が成立します。
身体 | ||
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CNS | PNS | |
脳 | 体性神経系 | 自律神経系 |
脊髄 | 感覚神経 | 交感神経系 |
運動神経 | 副交感神経系 | |
腸管神経系 |
中枢神経系は脳と脊髄で構成されます。
末梢神経系は更に体性神経系(somatic nervous system)と自律神経系(autonomic nervous system)に分けられます。
体性神経系は身体の動きを管轄し、感覚神経(sensory nerves)と運動神経(motor nerves)から成ります。随意神経系(voluntary nervous system)です。外的環境に反応します。
自律神経系は交感神経系(sympathetic nervous system)・ 副交感神経系(parasympathetic nervous system)・ 腸神経系/腸管神経系(enteric nervous system)から成ります。自己の意思とは関係なく働く不随意神経系(involuntary nervous system)です。体内環境に反応します。
- 交感神経系は身体の活動を準備させるのに働くもので、血流をコントロールします。身体が仕事をする部分に血液を送り、その間消化器官や肌への血流は減少します。食べてすぐに運動をすると心臓や筋肉に血液をやらなくてはならないため、消化に必要なエネルギーがそがれて消化不良を起こします。交感神経系は副腎(adrenal gland)を刺激することによってホルモン(アドレナリン80%:ノルアドレナリン20%)を分泌させ、更に活動効果を上げます。交感神経系の活動によって身体を緊張させる動きは、"fight or flight" 反応としばしば呼ばれることがあります。
- 副交感神経系はこの逆。身体をリラックス(弛緩)させることと消化運動のために備わります。涙は情動の興奮に伴うので交感神経系の仕事と思われがちですが、副交感神経系の仕事です。上に出た副腎と立毛筋は副交感神経系のシグナルは受けません。
- 腸管神経系は消化菅(gastrointestinal tract)・ 膵臓(pancreas)・ 胆のう(gallbladder)を管理し、以上のように交感神経系と副交感神経系の働きに応じて消化を休止したり促進したりするのですが、交感/副交感神経系と切り離されても独自に機能できるため、別の系統として分けられます。
腸管神経系は腸のコンディションを感知する感覚神経細胞・収縮を起こさせる運動神経細胞・収縮を調節する介在ニューロン(interneurons)から成ります。総神経細胞数は脊髄を超えるほどあり、気分や感情にとても敏感でダイレクトに反応を起こしたり、胃腸のコンディションが気分や感情に左右したりと脳との双方向性があるため、"the second brain"(第二の脳)とも呼ばれます。
神経伝達物質については30を超える種類を取り扱いますが、ことセロトニンは身体全体のうち95%が腸で見つかります。

そこから小枝のように広がっているものが樹状突起(dendrites)で、前の神経細胞から活動電位(action potential)、いわゆる電気信号を受け取ります。
細胞同士はくっついて繋がっているわけではなく離れており、この隙間はシナプス間隙(synaptic gap)と呼ばれます。
電気信号は細い胴体の軸索(axon)を流れ、それを巻く髄鞘(myelin sheath)が流れの速度を上げる役割をしています。
信号は枝分かれした軸索末端(axon terminal/bouton)からまた次の神経細胞の樹状突起へと流れていきます。
活動電位が起こるのには、ナトリウム(塩)、カリウム(ポタシウム)、カルシウムが使われるので、これらを食物から摂取しないと神経細胞の働きがうまいこといかなくなります。
神経細胞は神経伝達物質(neurotransmitters)も取り扱います。普段は軸索末端にあるシナプス小胞(synaptic vesicles)の中に収納されている神経伝達物質は、活動電位が軸索末端に達すると通路が開いて末端の外部であるシナプス間隙へ放出されます。すると次の細胞の膜にある受容体(postsynaptic receptor)にはまり込みます。はまりきらなかったものは、再び前の細胞の末端に吸収され、十分放出されましたとシグナルが送られます(reuptake)。
神経に作用する薬(psychoactive drugs)は、神経伝達物質とそっくりの構造をして成りすますことにより効果や症状を出します。働き方や薬の種類についてはそれぞれNeurotransmitters 神経伝達物質、Drug Use 薬物使用の学習ページをご参照ください。
脳についての説明は Human Brain 脳 の学習ページで取り扱います。