こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

摂食障害

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食べることの問題は、命の問題です。摂食障害の発症率は低いですが、患者が自覚をしていなかったり治療を拒絶することが多いため、報告数より実際の患者数は上がるとされています。

摂食障害には拒食症(正式名:神経性無食欲症 anorexia nervosa)・過食症(神経性大食症 bulimia nervosa)などの主なものがあります。

拒食症では、太っていないのにも関わらず自分の体型を歪曲して認識しており、摂食に罪悪や嫌悪を抱きます。
女性の体脂肪不足ではエストロゲンが作られず、無月経になったり骨粗鬆症を招いたりします。最悪の場合、命を落とすことになります。
体重や体脂肪増加への強迫的恐怖はアスリートに起こりがちで(athlete triad syndrome)、特に女性に注意が促されます。マラソン選手やバレエダンサーなどが代表的です。
男性の場合ではやはり体脂肪の増加に恐怖を抱きますが、女性と違った特徴として筋肉をつけることへの執着が顕著となり、muscle dysmorphia/bigorexiaと呼ばれます。筋肉は一般に「美」と捉えられているため、強迫的に筋肉に執着したりストイックな食事制限があっても、摂食障害として認識されることが少ないという特徴があります。
摂食障害は女性に多い障害ではありますが、このように男性にも起こり得ます。尚、男性の同性愛者では異性愛者よりも発症率が高くなります。
また極度の体脂肪不足は男女に限らずリポジストロフィー(lipodystrophy)という脂肪の変形を起こし、顔に顕著に現れます。

過食症は短時間の間に相当量のカロリーを摂取し、その後嘔吐を故意的に行ったり、下剤を使用したりという行為(purging)が見られます。夜に冷蔵庫を開ける癖がとまらないなどの症状が見られることもあります(夜食症候群参照)。多くの場合が炭水化物への渇望であり、セロトニンとの関係が研究されます。
また、プロの大食い選手となるような人たちも過食症に陥る可能性を高くします。

摂食障害は自尊心(self-esteem)の低さと関係しており、自己のありのままを受け入れることができない辛さと格闘しています。自尊心の確立には育ちが大きく影響していますが、親からの虐待、社会からのいじめなどの経験がある個人は特に摂食障害を引き起こしやすくなるとされています。また、完璧主義という性格も疾病要素として挙げられています。

体型についての観念(body image)はメディアの影響が大きく、理想体型が歪曲して認識される傾向があります。テレビや雑誌から私達の目に飛び込んでくるハリウッドセレブやグラビアアイドルのボディーは非現実的なものです。しかし、あまりにも頻繁に女性たちの細い身体や男性の割れた腹筋に目が晒されるので、私たちの中に身体のあるべき姿の観念として確立していくのです。

生物学的研究は摂食障害患者の脳を調べた結果、セロトニンのシステムが異常に活発化しており、急性ストレス及び不安が沸き起こされているとし、自己飢餓(self-starvation)によってセロトニンレベルを下げ、これらの好ましくない情動を取り除こうとしていると指摘しています。よって、治療にはセロトニンが正しく至るべきところに収まるようにするSSRIs系の薬治療が施されます。
更にこれに平行して、食事や自己に対する見方を調整するための行動認知治療が行われます。

科学的研究では人間は身長・年齢から割り出した平均基準体重より少し大目である方が健康かつ寿命が長いと発表されています。個人の実際の体重が標準体重の85%以下の場合、拒食症の恐れがあるので中学生くらいの女子は特に親が注意してモニターした方がよいです。

3はセロトニンについて
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