こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

Sleep 睡眠

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私たちの行動とは、社会的環境に左右され決定されていることに重きを置くのが社会心理学。特定の(特に問題のある)行動は個人に形成された中身からくるものだというのは性格心理学。いやいや思考が全てだというのが認知心理学。そして行動を生物学的に説明しようとするのが生物心理学及び脳科学です。
ここでは生物心理学でカバーされる、サイクルに基づいた私たちの睡眠という行動についてをご紹介します。ここに収まりきらないものは下の各ポストで説明されますのでご参照ください。


Biological Rhythm - バイオリズム -
私たち人間を含める生きる物の行動がリズム化するのに基準となる体内の時計は、生物によって太陽の動きによる朝と夜のサイクル、地球の傾きによる季節のサイクル、更に月の引力により潮のサイクルと連動しています。一般には『体内時計』という言葉が使われます。
脳内の視床下部(hypothalamus)という所が体内時計のタイミングを管理しています。この時計の針をセットするものとなるのは、光・食事(血糖値が高くなると目が覚める)・運動量(有酸素が脳を起こす)であり、逆にリズムをずらすものは時差や夜勤シフトなどとなります。

1サイクルにおよそ24時間かかる、つまり1日で一周完結するリズムを"circadian rhythm(概日リズム)"と言います。人間の「起きる/寝る」のサイクルがこれに該当します。リズムは体内で刻まれているものであり、単純に自分を囲む環境の変化で引き起こされているわけではありません。例えば「寝る/起きる」というリズムでは、光の量が多ければ起きているということではないので、24時間明るい部屋にいても、真っ暗で外からのどんな生活音もさえぎられたスペースにいても「寝る/起きる」はリズムとして繰り返されるわけです。
リズムの一周が1日より長くかかるものは"infradian rhythm"と呼ばれ、例としては冬眠や渡り鳥などの移動があり、これらは1週に1年かかります。その他には通常28日周期とされる女性の月経周期などがあります。
1日より短いものは"ultradian rhythm"と呼ばれ、90分を1サイクルとする睡眠があります。
また、月経周期とこれから説明する睡眠周期(寝ている間の脳の活動リズム)は、最初に述べた日光・季節・潮の満ち引きだのとは関係なくサイクルします。


The Stages of Sleep - 睡眠の段階 -
眠りそのものにもサイクルがあります。
それは脳の活動リズムによるもので、90分がワンサイクル。(集中力もこのサイクルで途切れるので、大学の授業は1コマが90分に設定されています。)
人によって差はありますが、おおかたこの90分間でREMとノンREM睡眠を一周します。
  • 目が覚めているところから、だんだんと眠くなると非常にリラックスした状態になります。うとうとしてガクッと落ちる感覚(kenestatic experience)は、リラックスはしているものの基本的にはまだ眠りに入りきってない状態です。
  • リラックスが続くとノンREM睡眠のステージ1(5-15分間)に突入します。まだ軽い眠りなので目が覚めやすい状態です。
  • 起きることがなければステージ2(5-15分間)に進みます。呼吸は更に深くなり、筋肉も緩みます。いびきが出始めるのがこのステージです。
  • 更に眠りが深まるとステージ3(5-15分間)、4(10-20分間)へと進みます。この二つを合わせてデルタ睡眠(脳波の形が三角を描くことから)と呼ばれ、深い眠りを経験します。デルタ睡眠中に目を覚まさなければならなことになると、疲れとだるさを感じ、集中力も思考力も失うので、昼寝の時間設定には気をつけなければなりません。
  • そして遂に、REM睡眠に突入します。REMとはrapid eye movementの頭文字を取ったもので、名の通りREM睡眠中は眼球が速く動きます。体温の規制がされないことから、爬虫類睡眠(reptilian sleep)とも呼ばれます。REM睡眠中では他のステージよりビビッドな夢を見ます。REM睡眠中は眠っているにも関わらず、目の動きの他、脳の活動・呼吸・筋肉の緊張は起きているときと同じ状態になります。REM睡眠が終わるとステージ2に戻り、サイクルを繰り返します。


The Roles of Sleep - 睡眠の役割 -
睡眠の役割は、疲れを取ることだけではありません。デルタ睡眠中に成長ホルモンが出され、身体成長を促したり、メンテナンスを行います。成長ホルモンは10PMから2AMの間に分泌されるため、この時間帯には眠っていないと怪我や病気の治りが悪くなったり、肌の調子が悪くなったりと、上手に細胞が成長および再生できない他、肥満の傾向を高くします。
また、脳が脳自身を刺激し成長を強化している他、REM睡眠中では記憶や学習を行っています。全てのことを学ばなくてはならない新生児では、睡眠の16時間中なんと50%がREM睡眠です。REM睡眠は年齢を重ねると減っていきます。記憶について
REM睡眠は若いうちは特に重要な日常行動の要素なので、脳はなるべくREM睡眠を妨げないように働きます。私たちはよくトイレに行きたい夢を見ますが、ほとんどの場合ドアや便器が故障していたりして用を足すことができません。これはREM睡眠を保つために脳が「それは夢の中で起こっているだけの偽りの情動ですよ」、と説得しようとしている作業だといわれています。

ちなみに、眠っている最中に咳きは出ますが、くしゃみはでません。これは生存における優先順位の問題で、気道に物が詰まったりすると命に関わるため寝ていても咳きは出るようにプログラミングされていますが、一方鼻を刺激するほこり等の侵入は直接命に関わらないため睡眠(特にREM)を邪魔することのないようセンサーが休止状態になります。

参考:
A Concise Guide to Psychobiology, Rickye Heffner 2011
Introduction to Psychology, Rod Plotnik 2007


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