こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

Interpersonal Relationships 人間関係

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人間関係における科学は人間間コミュニケーション同様、社会心理学及び人文(ヒューマニティー)科学の分野で研究され学ばれます。
人間関係の馴れ初めについてや人間関係を保つ上で影響してくる要素や人間関係の特徴などをここでは見ていくことにします。


The Origin of Attraction - 好意はどこから生まれるか -
人間関係とは様々なタイプがあります。家族、親子、夫婦、恋愛、友人、職場、ご近所、などなど。家族のメンバーは配偶者を除いて選択することのできない関係相手で、居住地や職場なども入り込んだ先で自動的に関係がお付き合いとして始まります。しかし、その中でも良いお付き合いができる関係とそうでないものもあり、良い付き合いができると「相性が合う」などと表現されます。
さて、相性が合うという気持ちになるには、お互いの間に何かが魅力となって引き付け合い、関係が始まる必要があるのですが、その要素とはどんなものなのか、人間間関係コミュニケーション学と社会心理学でまとめられたいくつかの説がありますのでご紹介することにします。

Attraction Theory
1. Similarity 類似性
似たもの同士で引き付け合うのだとする考えです。日本でいうところの『類は友を呼ぶ』といったところでしょうか。苗字が同じで親近感が沸くなどもこのタイプに分類されます。地方から上京している人では、同郷の人と付き合いが深くなるということもよくあります。
逆に相違性が引き付けの素になるのだとする考え(complementarity)もあり、例えるなら叱り好きな人と叱られ好きなどもこれに当たります。これは恋愛関係では比較的多く見られるタイプかと思いますが、関係全般を見るとsimilarityで引き付け合う方が多いそうです。

2. Proximity 近さ
物理的な距離が近い程引き合うという考えです。同じ職場で働いていたり、住んでいるところが近かったりすると親近感が芽生えるというタイプのものです。これは日本の『遠くの親類より近くの他人』という考えでしょう。『情が移る』の要素も絡んでいるかと思います。頻繁に特に密着して時を過ごすといとおしくなります。これを単純接触効果(mere exposure effect)といい、人間だけでなく物にも効果が現れます。

3. Reinforcement 報酬
自分にとってプラスとなる付き合いかどうかで決める考えです。報酬は褒め言葉や高価なプレゼント、あるいは情報も含まれます。また、相手から報酬を受けるだけでなく、自分が相手に与えることで相手への好意が増すという場合も当てはまります。この仕組みは手助けをすると相手に好意が沸くという効果(Ben Franklin effect)によるものです。また、情報を報酬とする傾向はゴシップや秘密をばらす人との関係に存在します。

4. Physical Attractiveness & Personality 容姿と性格
単純に容姿の好みで引き合ったり、性格を好んで引き合う場合です。attractivenessの基準て何かしら?ということでCunningham(1986)が研究を行いました。魅力を感じたとする顔に共通した特徴は大きい目と張りあがった頬骨という結果を出し、彼はこの理由を、大きい目は幼顔の象徴で可愛がろうとする気持ちを引き出させ、張りあがった頬骨は個人が性的に成熟すると見られる特徴であるためとしました。
恋愛対象に限らなくても、容姿が整っている人には知らず知らずのうちに心が歩み寄る体勢をとるので、外回りの営業にこの心理が使われることがよくあります。また、容姿が整っているほど出世の率が高いという研究結果も出ています。
恋愛について、容姿を含める魅力や引き付け合う素はRomantic Relationshipのページで紹介していますので、ご参照ください。

5. Socioeconomic & Educational Status 社会経済と教育レベル
経済力と学歴を重視した関係相手の選び方です。女性は男性に対して社会経済性を重視する傾向にあります。この傾向については進化心理学的な要素が働いていると見られ、女性は男性に安全確保能力と食糧捕獲能力を求め、それらを満たして家族の生命存続率を上げようとするものです。事実、男性と女性の社会性別的役割に差のない文化下ではこの傾向は薄れます(Egaly & Wood, 1999)。
現代では女性も外に出て働きキャリアを積むようになると、経済力は男性の力を借りずに済むことになり、経済力以外の魅力に重きを置いてパートナー選びをするようになる傾向が予想されます。これについては実際に調査が行われ、特定の文化下で女性の経済力が高い場合、男性の容姿に重視してパートナー選びをする確率が高かったという報告がされました(Gangestad 1993)。


Social Exchange Theory
social exchange theoryは、私達は関係を始める始めない・続ける続けないの判断をみかえりによって決めようとする傾向があるとする説です。
自分が相手に尽くしたり犠牲にしたりしなければならないもの(costs)を相手といてプラスになること(rewards)から差し引いたときにお釣りがくるようでないと関係は終了です。
また、私達は過去の経験から、現在とこれからの関係がどうあるべきかを形作り、それが期待というものを生みます。期待に沿わない関係だとやはり不満が出たり、幸福感に欠けたりします。
そして・・・・「他にもっといい人がいるのでは?」と現在の関係を他の相手との関係と比べることもあり、人によってこの比べる気持ちは低かったり高かったりするのですが、低い人は関係に留まり、高い人は相手をとっかえひっかえという傾向にあります(comparison level for alternatives)。


Relationship Maintenance and/or Deterioration - 関係の維持と劣化 -
付き合いが始まってから何の問題もなく関係が続いていくことはかなり難しいことですが、どのようなことが二人をつないでおくものになっているのでしょうか。DevitoはInterpersonal Communication Bookの中で6つの要素を挙げています。
emotional attachment convenience便宜 children子供 fear恐れ inertia慣性 commitment決心
①②③については問題なく想像がつくと思います。
④は友人関係でもたまにありますが、恋愛関係・夫婦関係で感じることが多くあります。相手との関係に執着がなくなっても、別れた後一人になる自分を想像すると恐怖感を覚え、そのため関係にとどまることにします。
⑤は「慣性」というなんだかこむずかしい表現ですが、一般的に言うと「惰性」「流れ」という解釈をします。関係の変化にはエネルギーを要しますが、流れに乗ったままいれば精神的・肉体的エネルギー消費からも面倒くささからも逃れられるのです。
⑥は原書では"commitment"とされています。この"commitment"を辞書で調べると「約束」とか「公約」のように日本語が当てられているのですが、人間関係あるいは心理のことで使われる場合の訳が存在していません。ここでは「決心」と当てさせていただきましたが、結婚などで、「一緒になったからにはそいとげる」という"自分の中に"誓いを立てることや、「この子の面倒は私が見ていかないと駄目だ」のような腹くくりのことを言います。このような心の態度があると、関係中でトラブルがあっても問題解決と克服に取り組む心づもりが強くなります。

さて、これらは関係の錨になっているもので、関係維持のための秘訣とは違います。どういったことに気をつければ健康な人間関係が保てるのでしょうか。あるいはどんなことが関係の劣化を招いてしまうのでしょう。
一番大きくて重要な要素はコミュニケーションです。男女間ではコミュニケーションスタイルに違いがあり、それによってお互いの理解に誤りが生じる結果、口論になることが多くあります。その他、効果的なコミュニケーション能力が身についていない人は、自分の欲求不満や怒りなどの感情を表すのに無視・意地悪・暴力などを行使する傾向にあります。
その他の要素としては、態度変化(attitude change)があります。これは、関係中の一人の物事に対する考え方が変化をし、相手も同じように付いて行くような形で変化すれば問題ないのですが、相手がそのままでいるとギャップが生じて分かり合えない感を生み出します。例えば、お互いそれぞれの夢に向かって頑張ろうと熱い思いを共有し、語り合い、切磋琢磨の良い仲でした。ところが一方が、夢を追っても全員が叶えられるものではないのだと何かをきっかけにして信じるようになり、相手が常にプラス思考で物事を言うことをプレッシャーに感じるようになりました。ここで相手も同じように、夢は叶わないものかもしれないという態度に変わると二人の関係はそのまま続いていきますが、態度変化が一方だけだと関係がギクシャクし始めます。しかしながら、先に説明した"決心"がなされている場合では、態度変化にどう対応するか相手は研究し、関係が存続する可能性を高めることになります。

参考:
Social Psychology, David G. Myers 2008
Social Psychology, Elliot Aronson et al. 2010
The Interpersonal Communication Book, Joseph A. DeVito 2009


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