こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

アルコール依存症の仕組み

Written by on
お酒に関する日本の歴史と文化から認識されにくくありますが、医学・心理学ではアルコールはタバコや麻薬と並ぶ薬物として扱われます。
「お酒がないと何もできない」のような高い依存を示さなくても、一日を終わらせるのに毎晩晩酌を必要としたりするのも精神的依存とされます。
アルコール依存症は極めてかかりやすい人で数ヶ月、そうでない場合で2、3年から十数年という時間を掛けて陥ります。

長い間のアルコール摂取により、神経伝達物質GABA(緊張を抑える物質)とグルタミン酸(glutamate:神経系を興奮させる物質)がバランスを崩してゆきます。
アルコールは脳内のドーパミン(dopamine:もっと欲しいと思わせる物質)のレベルを上げるため、"飲むこと"が満足を与えるものになりますが、ドーパミンに対する耐性が発達していくので同じ量のアルコールではそれまでと同じ程度の快感が得られず徐々に飲む量が増えていきます。肝臓や中枢神経がダメージを受けないと耐性は落ちません。
飲酒をやめたり量を減らしたりすると禁断症状が表れ、震え・不眠・吐き気・不安などを経験します。これらは全て身体的依存(physical dependence)の症状です。

これに対し精神的依存(psychological dependence)とは心理的なもののことを言い、十分なお酒のストックがないと不安で仕方がなかったり、お酒の身体的・精神的への有害性の理解や禁酒減酒飲の願望があってもやめられないというコントロール能力の欠損などが症状となります。

それでは次に、身体的・心理的・社会的危険因子についてを説明することにします。
アルコール依存症は誰しも陥る可能性のある病ですが、危険因子の中でも遺伝子が最も密接に関与しています。血縁に依存症がいる場合のかかる率は、いない場合の6倍です。
また、個人の身体がアルコールを分解して代謝する能力も身体的危険因子となります。"酔い"という効果が表れるまでの摂取量に個人差があります。沢山飲まないと酔えない人は、ちょっと飲んだら酔っ払う人よりも依存症になる確率が高くなります

次に心理的危険因子ですが、まず、ストレスがあげられます。ストレスホルモンとアルコール依存の関係性が指摘されており、PTSD(心的外傷後ストレス障害)とアルコール依存の併発が見られることが多いと報告されています(NIAAA)。
また、自尊心(self-esteem)の低さは、アルコールだけでなく種々の薬物依存や摂食障害など多くの精神障害に関わる心理的危険因子となっています。

社会的危険因子では、入手の容易さがまず指摘されます。低価格はこの要因の一つです。日本では自動販売機による利便性、24時間営業店での購入時間無規制などが含まれます。
もう一つにはやはり、広告を含むメディアの影響です。 女性が昼間にリビングでビールを楽しむ設定のコマーシャルや、飲酒行為を企画にするバラエティー番組などは、大衆の中にアルコールへの肯定的なイメージを育てる効果があります。幼年ではこれらが当たり前として観念付けられていきます。

アルコールに限らず薬物依存症は脳の正常な働きがぶっ壊れてしまった状態ですので、かかってからでは我慢とかいう問題ではなくなります。

アルコールについての教育と対策は国民の自制心に甘えて丸投げですから、ということを意識して皆様各自管理していただきますよう。
アルコールの身体への影響や"適量"については、Alcohol Use:飲酒のページで詳しく説明していますので参考にしていただければと思います。
女性は男性と代謝等が違いますので詳しくはアルコールと女性で説明します。

1は二日酔いのしくみ
1 2 3




Share this on... 
Page Top
Home



SPECIAL ISSUES