こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

Interpersonal Communication 人間間コミュニケーション

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コミュニケーションにはメッセージを伝える相手がいます。大衆に向けて映像や音声などを使ってメッセージを送るものはmass communicationであり、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などがコミュニケーションの媒体となります。一方、人間同士で行われるコミュニケーションはinterpersonal communicationとされます。
私たちの起きている時間のほとんどは何らかのコミュニケーション中にあるとされています。コミュニケーションという行為の時間が一日の大きな割合を占めるのは携帯電話に依存しているからに限らず、コミュニケーションの形態が広くに渡るためです。
ここでは心理学で学ばれるものをいくつか取り上げたいと思います。ここに収まりきらないものは各ポストで紹介することに致します。


The Definition of "Communication" - "communication"の定義 -
そもそも『コミュニケーション』とは外来語として定着していますが、どんな行動のことを言うのでしょうか。
心理学でのコミュニケーションとは、言語あるいは言語以外のものを使って二者以上の者がメッセージを表現(発信)し、受け手がそれを情報として脳に取り込む(受信)ことを言います。耳の聞こえない人の場合では、相手の身体的動作(手話・表情)や振動などを使って送られるメッセージを信号として受信し、脳で処理を行い理解をするのがコミュニケーションです。

植物や動物の色もコミュニケーションの要素です。果物であれば色と香りと味を使って熟れたことを表現し、「食べてください」というメッセージを送ります。食べられる必要があるのは、果物には足あって種を自ら運ぶという機能を持ち合わせていないためです。また、黄色と黒、赤と黒などの爬虫類では自己に毒があることを表現し、「触ると殺すよ」というメッセージを送ります。これらのメッセージを受け取って双方が繁殖率及び生存率を上げられること目的とした立派なコミュニケーションなのですね。

interpersonal communication(人間間で行われるコミュニケーション)は個人の思考や反応を自分の身体と身体以外の全てを用いて他人に伝えようとするものですので、握手やハグなどの身体が触れ合うもの(haptics)、会話中のうなずきやアイコンタクト、私たちの身に着ける服装そのもの、色、匂い、間(ま)などを通しても行われます。
これら、言葉や文字以外のものを使ってのメッセージ送受信は非言語コミュニケーション(non-verbal communication)といいます。非言語コミュニケーションは言語が確立される前から存在する、歴史的に古い、つまり原始的なものです。表情を使うのも非言語コミュニケーションです。

コミュニケーションの仕方は文化によって異なり、強いては男女によっても異なります。この違いによってメッセージが間違って解読・認識されることが「誤解」となります。


Perception in Interpersonal Communication - 認識 -
発せられたメッセージに反応して新たなメッセージを送り返すというやりとりであるコミュニケーションでは認知的な作業が脳で行われるわけですが、メッセージの理解・認識がキーとなります。この認識(perception)について、DeVito氏は
"The messages you send and listen to will depend on how you see the world, on how you size up specific situations, on what you think of yourself and of the people with whom you interact."
(送る・受けるメッセージは、自分が世界をどうみているか、特定の状況をどう把握するか、自分と相手をどのように捉えているかで変わってくる。)
としています。つまり、相手が意図したことは自分というフィルターに掛かればどのようにも変化するのです。例えば親戚の人が「お前はお母さんに似て色黒だなぁ」と言ったとします。親戚の人は相手を攻撃するつもりもしたつもりもありません。しかし、言われた方が肌が人より褐色であることをコンプレックスとして捉えていたなら、親戚の言うことをなんていじわるなのかと解釈することでしょう。しかし、褐色の肌を健康的で気に入っていたり自慢に思っていたのなら、親戚の言うことは褒め言葉と認識し「いいでしょ!」と得意満面に反応することになったりします。
この取り方の差は明確で、他人とのコミュニケーションで起こるだけでなく、対自分とのコミュニケーションでも起こり得ます。昔に書いた作文や日記など、後々になって読み返したとき「何言ってんだろう・・・」と思うことありませんか。時間を経て世界観が変わり、自己観念が変化したからこそ自分自身が発したメッセージなのにも関わらず当時の真剣さや意図したことが自分自身に伝わらなくなっているわけなのです。

DeVito氏は認識を5段階に分けています。
  1. stimulation(刺激)--- 最初のステージは感覚器官の刺激です。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚を使って情報を取り込みますが、これらを刺激するものに選択的に集中し、メッセージも選択的に受け取ります(選択的注意力参照)。
  2. organization(整頓)--- 感覚器官から取り込んだ情報を意味のなしえるものにします。そこで使われるのがスキーマという、いわゆる概念です。スキーマは個人の経験によって形作られます(スキーマとは参照)。例えばあるヨーロッパ人にとって対面時の挨拶のスキーマは両ほっぺたにチューでも、そのスキーマは日本人の挨拶と共通ではありまんね。
  3. interpretation - evaluation(解釈-評価)--- このステージでは意味をなしたものを自分なりに解釈します。上の続きを例にすると、ヨーロピアン彼氏がただの「こんにちは」のコミュニケーションを誰かにほっぺたチューで行ったら、ちょっとばかり気に入らない、みたいなことです。ちなみに自分の文化式の挨拶は良くても他人の文化式はなんか違う・・・としてしまうような、自己の文化をよしとして他文化を判断することをethnocentrismと言います。
  4. memory(記憶)--- 認識は記憶として保管されることになります。やがて記憶されたものたちがデータを形成することになるため、「一目見れば大体分かる」のようなことが可能になります。これについては長年の勘とか自己データとかをご参照ください。そしてスキーマは強化され、書き換えはどんどんと難しくなります(Aronson et al., 2007)。
  5. recall(記憶の呼び出し)--- 何かを思い出すということは事実の再現ではなく、記憶の再構築とされ、更に再構築はスキーマに強く影響されるとします。つまり、アリバイ証言などで「その時あなたの友人である被告人は待ち合わせ時間通りに来ましたか」などと聞かれ、友人のスキーマが『時間にルーズ』とあったなら、その日に限っては時間通りに来たのに「遅れてきたような気がします」とかいうことになり得るということです。


Nonverbal Communication - 非言語コミュニケーション -
言葉を使わないコミュニケーションを非言語コミュニケーションと言います。こちらについては別ページで説明します。


参考:
The Interpersonal Communication Book, Joseph A. DeVito, 2009


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