こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

セロトニンとは

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ここではセロトニンについての説明をまとめることにします。

化学的構造
セロトニンはトリプトファン(tryptophan)と呼ばれるアミノ酸とトリプトファンハイドロキシラーゼ(tryptophan hydroxylase)という酵素で作られている物質で、本名を5-hydroxyltryptamineと言い、 化学(科学)では5-HTと記されることが多くあります。

役割
セロトニンは神経伝達物質であり、以下のことに関与しています。
  • 気分
  • 睡眠
  • 食欲と消化
  • 記憶
  • 性欲と性的機能

神経伝達物質の仕組み
生成されたセロトニンは、神経細胞の末端にあるシナプス小胞という袋の中から飛び出すと、神経細胞同士の間にあるシナプス間隙に放出されます。隣り合わせの神経細胞の枝には、受容体(postsynaptic receptor)というものがあり、放出されたセロトニンをしっかりキャッチします。各物質と受容体は、鍵と鍵穴がはまり込む仕組みになっていて、セロトニンにはセロトニン専用の受容体があります。連鎖的に次々と神経細胞を行き渡ることになるのですが、受容体にはまり切らなかったセロトニンは、出てきたところに再び取り込まれていきます(reuptake)。
図にあるように、再取り込みされるセロトニンは自己受容体(autoreceptor)にはまると、「セロトニンは飽和してますから、もうやめて」というシグナルが出されます。 うつ病患者にはこの再取り込みを阻害する薬であるSSRIs(Selective Serotonin Reuptake Inhivitors)が処方され、SSRIsがシグナルが出されるのを防ぎます。

遺伝子
染色体番号17に、セロトニンの運搬に関わることが書いてある遺伝子があります。これはセロトニントランスポーター遺伝子(5-HTTLPR)と呼ばれ、染色体の対のどちらにもあります。対のうち一つの遺伝子(allele:対立遺伝子)にはS(short)かL(long)があり、対になってSS、LL、SLの型を作ります。
この型は気分に性格性を与えているとされ、SS型では沈んだ気持ちやネガティブ思考などが多く見られる一方、LL型ではその逆にポジティブ思考が多く見られるとされます。また、この型は集団主義文化と個人主義文化を分けたときにも型の偏りが見られる(アジアではSの出現が多い)ということで、文化と遺伝子のつながりが指摘されます。

増やし方
遺伝子でハッピー感が決められている...とは断定しないようにひとつお願いします。遺伝子は素因であはありますが、環境によってよくも悪くもなります。セロトニンの分泌量を増やす方法は以下挙げられています。
  • 運動 --- "ランナーズハイ"という、運動時に経験される恍惚感があります。ここではセロトニン含めるハッピー物質が放出されています。
  • 思考 --- いわゆる認知療法です。物事を暗く捉える癖を直して、いい面を見つける作業です。"Look at the bright side of life."
  • --- 季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder: SAD)の治療にも使われます。光の量は季節によって変わり、セロトニンは受ける光の量によって変わります。気分が沈んだのでと暗いところへ閉じこもると、セロトニンが減ってもっと暗い気持ちになります。南国人と寒冷地区住人の陽気さの違い・・・分かる気がしますね。
  • 食品 --- 乳製品・肉(赤身)・大豆・魚・卵など、セロトニン生成に必要なトリプトファンが多く含まれています。

注意点
間違っても『セロトニン配合』とかいうようなものに騙されないようにして下さい。外から摂られるセロトニンは、粒が大きすぎて血液脳関門と呼ばれる穴を通れないため(blood-brain barrier)、摂っても意味がありません。上で挙げたセロトニン生成に必要な栄養素を摂取して、身体の中で作られる必要性があります。
そしてトリプトファンが体内に入れられても、それを運搬して生成までこぎつけなければ無駄になってしまいます。運搬には炭水化物(糖分)が働きますので、忘れずしっかり摂取してください。



2は摂食障害について
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