こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

夜中に食べてしまう:夜食症候群

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Image from: WebMD
夜中につい冷蔵庫をあさって何かを食べずにいられない。
という行動は、単に不健康とかお行儀が悪いということではなく、夜食症候群(night eating syndrome)の表れとしてケアされなければならない可能性があります。

夜食症候群では夜に一日摂取基準量の25%を超えるカロリーを摂取したり、夜中に起き上がってまで食べてしまうという行為が見られ、睡眠障害を併発していることが多くあります。
日本ではメタボリックシンドロームの原因のひとつになることに重きを置き、"夜遅い食事が習慣化するとレプチンの作用が低下し、これに伴って血糖値や中性脂肪の値が上昇しやすくなることが知られています"としています(厚生労働省)。
レプチン(leptin)は脂肪組織から出されるホルモンで血中を巡り脳のclickで図が開きます。視床下部に信号を送り、食べたい・食べたくないの行動を起こさせます。ならば、肥満人口にレプチンを注入することで食欲が抑えられ痩せられるかという運びになったのですが、肥満人口の多くは既に自己の脂肪組織からレプチンを多く所有しており、レプチンに抵抗を発達させているため更なるレプチンを足しても肥満解消にはならないという結果になっています。この他食行為のメカニズム等についてはEating Behavior:食性のページをご参照ください。

さて、夜食症候群は摂食障害のひとつとして精神疾患に含まれます。
夜食症候群患者では、夜食に摂られる栄養素が炭水化物に偏っていることが特徴として見られ、調査研究では朝と昼間を合わせた摂取カロリーうち47%が炭水化物からのところ、夜食では70%を占め、たんぱく質との比率は7:1という結果が報告されています。記事:Night Eating Syndrome は、この炭水化物とたんぱく質の比率が、トリプトファンというセロトニンの原料になる物質を脳へより多く運ぶことを可能にしていると指摘しています。
これらを考えると、夜食に炭水化物を欲することは気分を落ち着かせようとする(セロトニンとは参照)ために脳科学的に学習された行動と疑うことができます。このことは、夜食症候群の薬剤治療のひとつとしてSSIRs(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)が効果的であることを説明するに足ります。

Briketvedt 氏によって行われた研究では、夜食人口のメラトニンレベルが比較グループ(control group)の肥満人口のメラトニンレベルより低いことが分かりました。
メラトニンはホルモンでも経伝達物質でもあり、夜になると分泌され24時間周期である概日リズムを保つ役割があります。夜食人口の食事の時間帯はずれ込むにも関わらず、この概日リズムは正常に働いています。
The U.S. Department of Health and Human Servicesは、"内因性のメラトニンは睡眠周期と連動する"と発表しています。 夜食人口の低いメラトニンレベルという素因が夜になかなか寝付けないという症状を出しているのではなく、反対方向に夜に起きてしまうためメラトニンが低くなっている可能性もあるのです。 つまり、夜食の行為がアラーム時計の役目を果たしていると考えられるのです。

外因性(錠剤など)のメラトニンは睡眠障害の治療には効果が薄いとされているので、メラトニンが夜食症候群の「起きてしまう」ことをケアするには十分ではないと考えられます。
メラトニンは視床下部が管理する松果体から分泌されますので、夜食行為の治療には内因性のメラトニンを増やすために視床下部の働きを改善する方法が研究されたらと思います。 視床下部は腸管神経系(enteric nervous system)からのシグナルを受け満腹感を感知しますから、食欲の調整が解決されたら一石二鳥ではないでしょうか。
2は摂食障害について
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References
Stunkard, Albert J. "Night Eating Syndrome". Eating Disorders and Obesity: A Comprehensive Handbook. Ed. Christpher G. Fairburn and Kelly D. Brownell. NewYork: The Guilford Press, 2002. 183-188.
Buscemi N, et al. U.S. Department of Health & Human Services. Melatonin for Treatment of Sleeping Disorders. Nov. 2004. 6 Dec. 2011.
Frances Sizer et al. Nutrition:Concepts and Controversies. 2010

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