男女の性別を決める話は性別の決定で説明します。こちらは脳と遺伝子における男女別特徴の説明です。
脳全体の大きさは男性の方が女性より大きいですが、部分部分では男女大きさが異なります。代謝的活性にも男女間で違いがあり、暴力が含まれる映像を見せると女性では左側、男性では右側の扁桃体がそれぞれより活発化するなどが例です。
男女別に特徴的な思考・感情・行動は、このような脳の発達や代謝の違いでもともと決定されているとする学者もいれば、社会が男女の役割を決定し、それに沿うことによって脳が発達させられているのだとする学者もいます。
例えば、SATというテストで数学部門は男子が女子より上回り、言語部門はで女子が男子より上回ったという報告について、脳科学はこの結果が脳、つまり生物学的要因によるものだとする一方、反対勢力は、社会的な「男子は数学が得意」というステレオタイプのため、数学に重点を置いた教育がなされて男子の数学的パフォーマンスが女子より発達した結果(Pygmalion effect)だ・・・とします。
著者には後者は屁理屈じみて聞こえるのですが、何しろこれは心理学では常に論議されるNature vs Nutureの戦いなのです。
更に他の学者は、「相違点より類似点の方が多いことが事実である」として、男女で違いがあることが強調されることを嫌います。生物学的に男女の得意不得意を決定されることは、男女平等を確実なものにしたい社会にとって、不都合な事実となります。
確かに、遺伝子上の男女の違いを数字で言うと大変小さいものになります。人間ではDNAは99.9%皆同じものを有しており、いろいろな相違点は0.1%の中のことです。DNA全体を見て男女の相違をわずかなものとするか、違いは違いであることを尊重するか・・・見方や捉え方の問題です。
Image Credit: Ragini Verma, PhD (PNAS)
① | 女性は右脳と左脳の両サイドをつなぐコネクションが多いのに対し、男性は同じ半脳内でつながれるコネクションが多い。 |
② | 小脳(cerebellum)では逆に男性が両サイドをつなぐコネクションを多く持ち、女性は同じ半小脳内でつながれるコネクションが多い。 |
この他これまでに発表されている相違点では、
(参考:Social Psychology, David G. Myers, 2008)
男女間にある生物学的な違いは、脳やホルモンの機能だけでなく、もっと根本的な、遺伝子という細かいものに書き込まれているものあるわけです。
例えば色盲はX染色体上にある遺伝子の異常です。女性が色盲の遺伝子を持ったXを一つ有しても、もう片方のXが異常をカバーしてくれてます。ところが男性はXYの組み合わせなので、X染色体に色盲があれば異常がカバーされることなく発現します。よって色盲は圧倒的に男性に多くなります。
ちなみに、色覚異常かどうかを調べる検査にはIshihara Testが世界共通に使われています。水玉模様の中に数字が浮き上がって見えれば正常、そうでない場合は異常となり、白黒のみの感知、赤・緑が感知されない、青・黄が感知されない等の異常がありますが、赤・緑を感知しないケースがほとんどです。
更に最近の研究では、男女の性行動・男性の攻撃性・母性行動が遺伝子(Brs3, Cckar, Irs4, Sytl4, 他12個)によって引き起こされているようだ、と発表されました。Nature vs Nutureの戦いに更なる火の油が注がれることになりそうです。