こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

配偶子の出会い - 自分は一等賞

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男女の違いについての記事が増えたため、ここで改めて男女の誕生をまとめることに致します。長くなるので、とりあえずPart1は卵子と精子の旅から。

女性は健康的に脂肪を身体にまとい始めると、女性ホルモンであるエストロゲンの生成が盛んになります。エストロゲンは第二性徴を促すもので、子宮・膣壁・乳房を成長させます。これら子作りに必要な環境が揃うと、卵を産むようになります(排卵)。卵はおよそ28日毎に1つずつ卵巣から出されます。受精が行われなかった卵は、不要になった膣壁の卵用ベッドと共に体外に排出されます(経血)。このサイクルが月経周期で、閉経(平均約50歳頃)まで繰り返されます。
男性の場合はテストステロンという男性ホルモンの働きで精通が起こると、女性とは対照的に常に生成されるので、子作りのタイミングを待つ必要がありません。しかも、女性より高い年齢まで子作りが可能です。

さて、女性からの卵子と男性からの精子が出会って融合を果たすのには、信じがたいほどに緻密で繊細な条件をクリアしていかなければなりません。
まず絶対的なことは、卵子の寿命です。精子の命が3~5日もつのに対し、卵子は排卵から長くて24時間しか命がありません。精子はこのタイムフレーム内に卵子と出会う必要があるわけです。
一度の射精で放出された300,000,000の精子のうち、1,000体のみが子宮口の通過に成功します。
子宮口は普段は閉じていますが、排卵期になると開いた状態になります。精子は子宮口を抜けても子宮内のひだにトラップされたりして、200~300にまで生き残りを減らします。
これらがやっと卵管まで進むと、今度は卵管内の細かい絨毛にひっかかり、精子は更に数を減らしますが、長旅の間に温度が下がることで精子の頭部を覆っていた粘膜が変化を起し、ラストスパートと言わんばかりに活動具合が上昇します。そして、残った40、50ほどの精子が卵子と対面を果たします。
卵子の外側表面に接触した精子は、頭部から特別な酵素を出して表面を溶かし、卵子細胞膜にタッチするとゴールとなります。
卵子細胞膜は精子を包むようにして内部に取り込みます(受精)。受精は卵管で起こります。この作業が行われると同時に、卵子は他の精子が細胞膜にタッチできないような物質を出し、シャットアウトが施されます。つまり、第一位でゴールした精子以外は受け付け拒否となります。
精子の受難を助ける如く、女性がオーガズムを得ると膣の筋肉収縮が起き、それが精子を先へ先へと吸い上げるポンプのような働きをします。
更に、卵管にいる卵子は物理的に動いてはいないものの、特別な「こっちへいらっしゃい」シグナルを出して精子を自分へと導きます。このシグナルを拾えなかった精子は、反対の卵管へ泳いでいってしまうのです。
さて、受精卵は先ほどは精子の邪魔をしていた卵管の絨毛の一糸乱れぬ動きにより、子宮へと運ばれていきます。上手に転がしてもらった受精卵は子宮へ落ちると壁に張り付き、ここで着床となります。
受精卵の着床成功率は60%で、受精=妊娠ではないのです。不妊症では、受精はするものの厭世的な絨毛が皆と反対の動きをし、受精卵が子宮まで落ちてこれないことが原因である場合も少なくありません。
更に着床しても全てのケースが出産まで至るわけではないのは皆さんもご存知の通りだと思いますが、母体の身体的異常・胎児の染色体異常・催奇形性物質(teratogens)などが原因となり、10-20%は流産してしまいます。
さて、この間絨毛だけが忙しくて受精卵は気楽に運ばれているだけ・・・というわけではなく、受精卵の中身では大変忙しいことが起こっています。この内容は、命の始まりをご参照願います。

人間の細胞の核には染色体が合計で46あり、二つ一組(diploid)となって23組あります。ところが、卵子と精子という細胞(gametes:配偶子)は特殊で、染色体の数は23で対なし(haploid)です。卵子の23、精子の23を合わせて46が完成します。ただし、それぞれの染色体は減数分裂(meiosis)で起こる乗換え(crossing over)という作業により個人特有のDNAの組み合わせが作られますから、同じ親からでも兄弟が同じ人間ということにはなりません。組み合わせは約八百万通りにもなります。上での妊娠出産成功の確率も加味すると、天を仰いでしまうほどの確率で生まれ出た自分・・・。 「産んでくれって頼んでないやい」なんて、頼む前に自分で頑張ったのです。

3で染色体を少し掘り下げます。
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参考:Sexuality Now, Janell L. Carroll, 2007

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