
オーガズムは性行為中の身体的な変化の一つとして、主にヒューマンセクシュアリティーと女性健康の分野で研究されます。
MastersとJohnsonは、性行為を身体的な反応によって段階(phases)分しけました。流れ全体を"Sexual Response Cycle"と呼びます。段階順序は以下となります。
1. excitement(興奮)
2. plateau(変動のない期)
3. orgasm(オーガズム)
4. resolution(消散)
これに対しHelen Kaplanは、性行為に及ぶにはexcitementの前に「したい」という欲がないと何も始まらないのだとし、心理的な要素に重きを置きます。欲があったから興奮することのなったのか、興奮したから欲が生まれたのか、真相についてはまた別の機会に考察・追究することにしましょう。
さて、男性はオーガズム時の射精から再びexcitementの特徴に見られる勃起に至るためには、言わば休憩時間であるresolution phaseが必要ですが、女性は連続したオーガズムが可能であり、resolutionは必要ありません。
精子が出なければ受精もないので、男性のオーガズムは子作りのための必須事項。しかし、女性のオーガズムについてはその必要性を軽んじられてきたのです。
セクシュアリティーへの探究が進み、女性のオーガズムについて研究されると、
女性のオーガズムは、膣の筋肉伸縮を起こして、蛇腹ポンプのように精子を上へ吸い上げる役目がある
ことが発見されました。精子の命が72時間あるのに対し、卵子の命は排卵から24時間しかありません。その限られた短い間に受精の成功率を上げる機能として女性のオーガズムが働いているのです。
むしろ、受精の難しさは時間枠のせいだけではありません。放出された3億の精子は女性の免疫システムによって殺され、子宮口通過に至るのは1000体。これは精子をバクテリアと同様、身体に害をもたらす可能性のある侵入者とみなして攻撃することによるとされています(が、吸い上げるという逆の意識が働いていることを考えると、攻撃をも交わして生き残る能力のある精子をふるいに掛けている行為なのではないかと、著者個人的には推測します)。卵子と合体したい精子にとっては試練ですが、オーガズムが起これば、精子は子宮内へと侵入しやすくなるのです。