こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

ジェンダーとは

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The Self:自己のページにおいて、自己とは取り巻かれる文化や他人を通して形成され浮き彫りにされる、という社会心理学での学習内容をご紹介しました。
今回は『自己』を形成するうちのジェンダーについてを少し。
ジェンダーのあれこれはヒューマンセクシュアリティー学でも取り上げられる内容となります。

まず、『ジェンダー』って何ですか?ということです。

ジェンダー(gender)とは、心や感情の上での性別のことを言い、社会的に取り扱われる「男女」を表す時に使います。
これに対し、遺伝子に基づく性別がsexであり、生物学的・医学的に取り扱われる「男女」を表すときに使います。
個人が自分自身を「男である」と認識するか、「女である」と認識するか、いずれにしても自己の性別認識はジェンダーアイデンティティー(gender identity)となります。
心と体の性別が異なり、生物学的性別に足かせを感じ反対の性になりたいと望み悩むような状態では "gender dysphoria" (旧gender identity disorder:性同一性障害) として診断され得ます。

ある個人が女性(男性)として生まれ、心も女性(男性)になるのは、社会的な影響によるものとする学者もいれば、いやいや、行動のもとになるものは遺伝子に書き込まれているとする学者もいます。これについては他の記事でも何度か紹介していますが、いわゆる Nature versus Nurture という、生まれか育ちかの心理学で毎度繰り広げられる論争です。

あるとき著者の知人が、立ったまま何かを頬張っていたら「座って食べなさいよ、女の子なんだから」と、女性に言われているところに同席しました。日本は先進国ですが、男女の振舞いについて「女らしく」「男らしく」という観念が根強く残っていることを実感した瞬間でしたが、一度気付いてみると、インターネット上でもテレビの中でも、「女のくせに」「男なら」という表現が普通のこととして発せられているのがよく見えてきます。
このような、人間をカテゴリで分けて一括りにし、特徴や傾向を当てはめることをステレオタイピングと言います。(当てはめられた内容はステレオタイプです。)

ジェンダーステレオタイピングは対他人だけに行っていることなのではなく、自己自身にも行っています。
周りが自分に対して持つイメージを受けて、それに自ら寄せていく傾向があるのが私たちです。よって、例えば男性が女装したいとかそういうことではなく、股の間のいろいろ上スカートをはきたいなと思っても、「男性がスカート」というのは社会規範から逸脱するためダボダボパンツで留まったり、本当はすごく面倒なのに女性なので仕方なく爪の手入れをしなければならなかったりと、細かい判断もジェンダーステレオタイピングに基づいてなされているのです。

気付かれた方も多くいらっしゃると思いますが、ステレオタイピングは差別につながっているということです。再び女性を例に挙げるのであれば、"女性はある程度の年齢まで働くと結婚してやめる"のようなステレオタイプのため、仕事のみに専念する人にとっては被雇用上の不都合が発生してきます。更に、子育て役というジェンダーロール(ロール:role =役割)が課されハンディキャップとなったりします。「女は産休ばかりで休めていいな」と言われることも残念ながらあります。
どうしたらこの問題を取り除いていけるかについては、ジェンダースタディの方が心理学より熱いことでしょう。と、いうことで、心理学ではジェンダーがどう自己認識と行動に関与しているかというところに留めておきます。


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