こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

ジェンダーロール

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男と女では能力や思考傾向に違いがある、とは一般的に認識されてはいますが、これを科学的な事実とできるかどうかについては多くの研究が行われており、いくつかについては違いが認められています。ただし、その原因が生まれつきの性別にあるか、社会的要因にあるかについては専門家の間でも意見が割れます。

日本のようなジェンダーロール(男女別社会的役割)意識が強い文化では、男なら男らしく女なら女らしくというステレオタイピングが堂々と起こり、つい最近でこそ"ジェンダーレス"の啓蒙が芽生え始めてきましたが、一般家庭から始まり教育やメディアの中でも男性と女性の在り方をそれぞれの性別に分けた形で語られることがほとんどです。
ここでは行動の違いの原因についての究明はとりあえず脇に置き、「男は恥を認識すると不健康になる傾向があるのは否めないようだ」という研究結果を見てみることにします。

比較的最近の研究(Washington University, 2013)では、『夫が大黒柱』という絵が崩れた場合に、夫の性機能不全・不眠症・不安症などの診断件数が上昇したという、身体健康への影響が発表されています。
最初から妻の方が収入が高いと分って結婚した場合には問題にはならないのだそうで、結婚の後に妻に追い抜かれるという負けが健康を害するまでにストレスになるということを示唆するものと考えられます。
この結果には先行する研究があり、やはり妻に収入の面で大幅に負ける夫は浮気の傾向が高くなるそうです(Cornell University, 2010)。
これには恐らく自己逃避の心理が働いているものと思われ、浮気だけではなくギャンブルや酒などの依存症発症率も上がってくると思われます。

このように男は恥を認識すると不健康になる傾向があるのは、夫が妻に大黒柱を奪われたことからくる夫の自己への落胆からくると思われます。

これは男性優位社会が作る男性のジェンダーロールの認識によるもの(nurture)であって、男だからそういうことになっていると生まれ付いて決定されているもの(nature)では(現段階の研究結果では)ありません。

つまり、男であれば女よりも家に持ち帰る獲得物が多いはずと期待される社会規範から自分は漏れてしまったという解釈を行い、その思考が自己にストレスを与えてしまう結果になっているということです。
ただしちなみに、競争心の激しさは男性ホルモンであるテストステロンにより助長されることは明らかにされています。

勘違いの無いように加えておきますが、女性は男を尊びなさいということではありません。同時に、これは更に男性優位社会の正当化でもありません。
夫・男性、妻・女性のどちらがどのような仕事を受け持ってどのように生活を支えるとしても、誰も不快な思いや不健康を患うことのないように、男女ということにとらわれず個人それぞれを尊重する社会体制が確立されることが必要なのだと思います。
女子短期大学は男子に対する性的差別となってやしないか?などの声が上がって改善される日が来るのも、時間の問題だとよいですね。


Revised by the author on June 5, 2016

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