こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

おこりんぼう・コントロールフリーク

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子供の頃に親との関係を通して培われる自尊心が、どれだけ将来の個人の精神健康とそれに準ずる人間関係および社会的行動に影響を及ぼすのかはざっと自尊心とはの記事でリストアップしました。
おこりんぼうもまた自尊心の低さが関係していますが、脳の仕組みでいうと次のようなことが起こっています。
感情は脳の 大脳辺縁系
(limbic system)内の扁桃体(amygdala)というところで管理されます。
扁桃体は幼少に虐待を受けたり、極端に厳しい親に怒られて育ったり、親の激しい夫婦喧嘩を見て育ったりすると萎縮するとされています。この扁桃体萎縮は恐怖感を持ちやすい状態を作り、そのため不安症・恐怖症などの精神障害を発症しやすくなる他、恐怖感から防御反応として怒りの感情を起しやすくなります。

おこりんぼうの人、例えばピザ屋の配達員にまで遅いからとあわや喧嘩をふっかけてしまうような何しろ誰に対しても頻繁に高圧的な態度を示す人は、成長過程で自己是認欲が満たされなかったケースが多く、自己が他人に受け入れられないかもしれないという不安や、自分のポジションを揺るがされる恐怖から人を威圧しがちで、大声やまくし立てが効かない場合では、暴力を行使することもあります。
自分自身と向き合うことから始めて自己を是認し、建設的・効率的なコミュニケーション方法を学んでいく必要があります。 しかしながら、そもそも自分自身と向き合うこと自体に恐怖があるので、人から言われても行動の改善に取り組むことには拒否反応を示しがちです。
男性の場合は特に、自己の抱える問題について他人に手を貸してもらうことは"問題解決能力不足"と判断をされるという懸念に直結しており、恥および辱めと取る傾向にあります。この傾向ゆえ、鬱やアルコール依存症などの深刻な精神的不具合を患った場合でも、専門家にヘルプを求める率が女性に比べて断然低くなります。

攻撃的な言葉や態度を表すことで人が自分の思うように動くことを学習してしまった個人では、もはや悲しみ・落胆・絶望・苛立ちなども全て怒りで表現され、自分を落ち着かせることを相手に期待します。
例えば、彼女の帰りが遅くて心配だというような場合も、素直に『心配』を伝えるのではなく怒鳴り散らすなどして謝罪を求め、再発がないことを約束させます。このように自分の期待通りに彼女が動けば安心なのは、自分が上で彼女が下という構図が保たれるからです。
こういった行為は威圧的コントロール(coercive control)であり、パートナーを支配下に置いておく作戦です。威圧的コントロールを行う人格は臨床的に診断されるものではありませんが、"コントロールフリーク"(control freak)と呼ばれます。

威圧的コントロールをされるパートナーはパワーに圧倒され自主性を失くし自己評価も低くしていくと、何でも言うことを聞くようになり、無気力感(learned helplessness)から関係を経つことが難しくなっていきます。
「お前は外では何もできない」などの言葉でパートナーを無能だと信じ込ませるような制圧をも試みます。
これらの個人は感情のアップダウンが激しいことが多く、またそれをダイナミックに表に出します。怒鳴り散らした後に捨て猫のように振舞うことがあります。するとパートナーは、「暴力的なところさへ治ればいい人」という見方を振り切れなかったり、「自分しかこの人を見てあげる人はいない」のような責任感すら生んでしまうのです。こうなると共依存が成立します。 鬱を患う場合も少なくありません。



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