ここでは育ちの影響に着目します。
幼少期にどれだけ保護者(特に母親)との関係が安定していたかによって、将来健康な人間関係が築けるかが決まるとされています(Ainsworth, 1978)。
子供は母親から無条件の愛情を注がれます。そこには、「生まれてきてくれてありがとう」という尊さの表現から始まり、「この子が立派な大人になりますように」という正しい教育が含まれています。
個人は一人の人間として認められ受け入れられ、安全も確保され、「自分はここにいる」という安定感(自尊心)を育てていきます。また、親から仕事を任され責任感を育て、物事の達成時には褒めてもらい、親にお願いしたことは約束通り実行してもらい、お互いの間に信頼を築いていきます。
こういった中で自分と他人の関係の観念を完成し、その先経験する人間関係の型紙のようなものになるのです。
自尊心がしっかりと高い場合には、自分に対して理不尽な思いをさせる相手にはきちんと"No."と言うことができ、健康的な関係を保てる相手を見つける率が高くなります。
親子の信頼関係が確立されない環境下、つまり、怒られて否定されてばかりいたり、干渉されすぎたり、放置されたり、条件付で愛されたり(親が気に入ることしか受け入れないなど)という場合では、自尊心の低い人間を育ててしまいます。
自尊心の低い人は、幼少に満たされるべきだった「あなたはあなたでいいのですよ」という自己受容の欲、つまり無条件の愛に飢えています。そのため、相手の愛情を試すようなことばかりをしてしまいがちで、それが原因で関係が終わってしまうことも少なくありません。
自分はどうやったら愛されるかばかり気にしたり、相手が自分から離れやしないかばかり心配したり、歪曲した独占欲を愛情と感じたり、極端に依存度が高くなったり、あるいは他人全員を信頼することなく中には敵意に満ちる個人もいます。
相手も同じように自尊心の低い場合では、共依存に陥ることもあり、暴力などひどい目に遭っても関係を抜け出せないことも多々あります。
Ainsworthの言う母親との関係は、"Attachment Styles"と呼ばれる3つのスタイルに分かれます。
- ①親としっかりと結ばれている(secure attachment)
- ②触れ合いを避ける(avoidant attachment)
- ③くっついていないといつでも不安(anxious/ambivalent attachment)
②は深い付き合いには窮屈さを感じ、信頼関係を作ることは難しいタイプです。
③は恋愛関係は三つのうち一番短く終わってしまうタイプ。愛の見返りがないと一番イライラするタイプでもあります。
②のタイプの男性と③のタイプの女性(尽くし型)の組み合わせはなかなか相性がよいという発表があります(Kirkpatric & Davis 1994)。