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こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

同性愛者の行動脳科学

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ここでは 、Biological PsychologyにおいてJames W. Kalatが着目する同性愛者の生物心理学的特徴を見てみることにします。

  • 1 行動面と解剖学的相違
  • 行動面では、道を覚えたり説明したりする際、男性は通常東西南北の方位を使用する傾向にありますが、男性の同性愛者は女性の特徴に近く、目印になるものを使う傾向にあります(Hassan & Rahman, 2007)。
    身体的な違いでは、身長を比べた場合、異性愛者の方が同性愛者より平均して1.5cm高いと報告されいます。

  • 2 遺伝子学
  • 性的指向に限らず、特定の現象に遺伝子が関与しているかどうかを見極めるのには双子を使っったリサーチが行われます。一卵性双生児と二卵性双生児の同性愛者の出現率が比べられたリサーチでは一卵性双生児の方に高くなり、よって性的指向は遺伝子上に書き込まれた情報であると現在のところ認識されています。しかしながら遺伝子の性的指向決定における強さは未解明です。

  • 3 進化論的疑問
  • 自然界の動物においても同性愛行為は観察されています。進化、つまり種の保存を目的とする生物にとって同性愛の遺伝子が残るのはどういう必要性からなのか。
    サモアで行われた調査では、男性の同性愛者は平均して甥や姪を面倒見する率が高いという結果を出しました(Vasey & VanderLaan, 2010)。このことから繁殖に直接関わらなくても近い者の生存を助ける行為が同性愛遺伝子の継承につながっている可能性があるとされ、これはダーウィンの言う血縁選択説(kin selection)に起因します。
    その他、同性愛遺伝子が環境的作用によって他の遺伝子と連動し活発化されるのではないか、という仮説も立てられるとします。

  • 4 妊娠中の影響
  • 同じ親から生まれる子のうち、同性愛者は後になるほど現れやすいとされています(Blanchard, 2004)。男性の同性愛者には年上の兄がいることが多いということです。これは、母体の免疫システムが男児のたんぱく質に反応して攻撃を仕掛けることにより男児の成長に抑制をかけるためではないかとされます(Ridley, 2003)。
    また、母親のストレスやアルコール摂取(teratogens)が胎児の発育を抑制し、その結果胎児が男性性を発達しきれなかったとも考えられます。母親ラットにストレスとアルコールを与えた実験ではメスの子には影響は見られなかったものの、オスの子は成長してからメスっぽい行動を見せたという結果が出ています。

  • 5 脳構造
  • 脳の特徴では男女で違いがあります(男女の違い-脳と遺伝子参照)。例えば、女性が左右の脳の大きさをほぼ同じくするのに対し、男性の右の脳は左より数パーセント大きいなど。また、女性の左の扁桃体(感情や記憶に関係する場所)の連結が右より広くつながっているのに対し、男性ではこれが左右逆です。男性の同性愛者では女性の特徴の方に近くなります(Salvic & Lindstrom, 2008)。
    ただし、線を引くのが難しいのは、もともと脳の違いが発生していたのが先か、行動に伴って脳がそのように発達したのかということなのです。そうなるとそもそもの男女の脳の違いにも同じことが言え、長い間のgender roles(性別に付随してくる社会的役割)が私たちの脳をそれぞれ男女に特徴付けるように発達させたのかもしれないのです。これがいわゆるNature vs. Nurtureの戦いです。

3は男性同性愛の歴史
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