こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

Romantic Relationship 恋愛関係

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男女がひきつけあう仕組み、「お互い赤い糸で結ばれていた」とはなんともロマンチックで詩的ですが、恋をするとちょっぴり苦しいのです。
この苦しさというストレスを取り除きたい欲に駆られる私たちは、なんとかして苦しさの根源を理解しようとしたり、感情の説明を求めたりします。「こんな気持ち、どうしたらいい?」と思う次の瞬間に、「そうだ、心理学に頼ろう」と思いつきます。
当サイトでは、恋愛中のドキドキの仕組みや、何故今晩あの人に惹かれたのか、何故あんなに激しいキスだったのか、あるいは不思議なあの夢の意味についてなどが心理学で説明されています。しかし、心理学は苦しみを除去するのと同時に、ぽんわりした気持ちを一掃してしまいます。ごめんなさいね。
感情とは自己の内側から湧き出てくるものであり、説明付けられるといっきに冷めます。従って、感情の説明付けは怒り・嫉妬・恐怖などの放っておくと危険な状態に成長しえるものには絶大なプラス効果がありますが(認知)、喜びに関連するものだとバラ色感覚を失わせます(例:reason-generated attitude change)。ですから、恋愛を学問として学ぶ場合と、危機回避目的、あるいはやめなければいけない不健康な恋愛問題解決目的を除き、自分の恋愛に付随してくる多少のストレスについて科学的なことを追及するのはお勧めしません


Why Do We Want Partners? - 恋愛という行動 -
出会いで惹かれあって結ばれるのは、科学的には赤い糸ではありません。男女ではホルモン(エストロゲンとテストステロン)が鍵です。
そこに偶然の出会いとか新しいことに対する脳内麻薬のドーパミンが出て心踊り、薄暗い飲み屋で大きく開かれる相手の瞳孔に魅了され、ハグでオキシトシンを分泌させて絆を感じ、女性によって行われる免疫タイプの査定(キス)があり、男性はキスでの唾液交換から女性に性交欲をパスし、相手をもっと知りたいと思うことになった状態が恋であり、お互いに相性を認め合うと結ばれます。
これらは恋愛のメカニズムで、"how" を説明する部分です。
では、"why"の部分はどうなのか。詰まるところ全ての生物が後世に種を残していくためにいろいろな機能を駆使して生き残ろうとしているの同様、人間もまた確実な出産と生存と交配のために・・・というのが "why" にあたります。
これは人間を含める生物についてを科学的に説明するときに基盤とされる進化論ですが、宗教思想によっては "why" の解釈を神の意と取る世界観もあります。化石や隕石とDNA、あるいは聖書のどちらを紐解いて事実が書かれた歴史書とするかは子供一人が男女から生まれてくるという奇跡の見方についても影響し、議論が絶えません。
心理学は数字を使う科学であるため、二者間の恋愛を運命ではない他の可視ないし測定可能な要素を用いて説明するということになります。手相判断や占星術なども心理学とは全くの別物となります。


Attractions for Romantic Relationship - 恋愛における魅力 -
恋愛に限らず人間同士が惹きつけあう要素はInterpersonal Relationships:人間関係のページで紹介しました。恋愛関係の場合はそれらの他に、進化心理学的および生物心理学的な要素が追加されます。この要素は脳の活動やホルモンの変化と恋愛行動及び交配欲を観測して導き出され、それによって恋愛における男女間の惹きつけあいを説明するものです。
人間を含む全動物は種をつないでいくこという目的を果たせるような身体の構造や機能を持ち合わせています。子孫を残すための交配相手の選択は、ホルモンを感知するなどの意識をしないレベルで行われています。
これを裏付けるスイスで行われた実験がありました。男性に2日間同じシャツを着てもらい、そのシャツの匂いを女性に嗅がせます。好ましいと思ったものを女性に選ばせます。女性と男性それぞれの遺伝子上にある免疫のタイプは事前に調べておきます。女性は自分の免疫のタイプと異なる度合いが高い男性の着ていたシャツを一番好ましいと選んだというものです(参考:NBCNews)。
免疫のタイプが違う者同士で子孫を作ることは子どもの免疫に多様性を与えることになり、よって子どもはより多くの種類の危険因子に対抗性をもつことで生存率を高ることができます。

以下、これまでに発表されている魅力についての研究結果です。
  • 女性の排卵が近づくと、エストロゲンの上昇に伴って皮膚の下にある血管の流れが良くなります。更に、妊娠しやすい期には女性の声は周波数が上がり、男性がより好む声になります(2008)。
  • 男性は女性が排卵しているかどうかを感知できる能力があります(2003他)。
  • 男性は嗅覚を使って女性の体臭と声から排卵期にあることを感知し、排卵が近くないときより魅力を高く評価します(2010, 2012)。実験は「誰が排卵しているでしょうか」というテストではなく、「どの匂いが一番そそられますか」「どの声に一番魅力を感じますか」などと問われたもので、これらの要素に性的に感じる魅力が測られました。高い魅力を示したものが排卵期にある女性からのサンプルだったというものです。
  • 女性は排卵するといつもより男性色(筋肉、ひげ、攻撃性)の濃い人に惹かれる傾向にあります(Johnston et al., 2001)。これらの男性的特徴は男性ホルモン(androgen)の一種であるテストステロン(testosterone)が作り出りだしているものであり、テストステロンの強さは元気で健康な精子を有していることと、出産後に家族を敵から守れる強さ・獲物を取ってこれる強さを有していることを表しています。
  • 容姿の面では、男女共に右と左が対称的(symmetry)な顔をより魅力的に感じます(Little et al.)。女性の場合は、やはり排卵中だとより左右対称に近づきます。
  • 左右対称な顔は良い遺伝子を持っていることを表しています(Grammer & Thornhill)。 → 平均顔がモテる訳
  • 男女で共通して魅力を感じる顔の特徴は目が大きいこと。目が大きいことは、いわゆる"ベイビーフェイス"の特徴であり、それが暖かさや守ってあげたいような気持ちを引き出します(Berry et al.)。
  • 男性が交配のパートナーを容姿で選ぶ傾向が女性より高いのは、身体つきからわかる年齢と健康を重視、つまり妊娠・出産・授乳ができる可能性が高いかどうかで判断するためとされます(Buss 1988)。


Triangular Theory of Love - 三角理論 -
ここでは恋愛の形について生涯心理学及び人間間コミュニケーション学で提示されるものを載せておきます。
Robert Sternbergは恋愛の要素を三つ挙げ、要素同士の組み合わせで特定の形があることを提唱しました(triangular theory of love)。
三つの要素とは、
Passion = 身体的な魅力(情熱)
Intimacy = 心の通い度(親近性)
Commitment = 腹括り(決心)
とされ、組み合わせは以下になります。組み合わせは各要素の頭文字です。
  • なし(nonlove): 恋愛不成立
  • I(liking): 友達状態
  • P(infatuation): 一夜限り
  • C(empty love): ひとりよがり
  • P & I(romantic love): ロマンチックな恋愛
  • I & C(companionate love): 絆、長い付き合い
  • P & C(fatuouse love): 燃え上がっているけど不安定な恋愛
  • 全部(consummate love): バランスのよい恋愛
ここでの"love"は恋愛としてのものですが、英語文化はloveに広い意味を持たせるため、日本文化にそのまま輸入すると勘違いも招きます。そこいらの説明は愛の種類をご参照ください。
脳科学の観点は恋と愛の脳科学で説明します。


参考:
Social Psychology, Elliot Aronson et al. 2010
The Interpersonal Communication Book, Joseph A. DeVito 2009


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