こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

愛の種類

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心理学は人間の思考や行動を科学的に研究する学問ですが、全人類を『人間』という一括りにして他の生物と分けた場合の行動傾向を把握してまとめようというとき、恋心や慕う心や愛情は人間に特有だと考えられがちですが、ホルモンや神経伝達物質などの点から見るとさほど人間が特別なのではないことが分かります(恋愛関係オキシトシン参照)。

しかしこれを人間の文化別に見ると、相違する特徴が少しあるようです。
例えば集団主義文化を持つ中国では、"guanxi" という言葉が存在し、これは人とのつながり合いの中にある愛のことを表現するそうです(Zhang & Kline, 2009)。

日本の場合では、(彼氏に/彼女に)"甘える" という言葉がありますね。私たちにはこの言葉だけで意味が分かりますが、非日本人にとっては「大人が子供を懐にかばうように自己を愛してもらうことを欲する行為」「守ってもらう」のような説明が必要となる、特殊な愛の形です(Takeo Doi, 1971)。
この言葉の説明や背景は人間の上下関係がはっきりさせるものなので、個人主義平等文化で育った人たちには嫌悪を生むことも少なくありません。

また、英語での "I love you." も、これの意図するところを日本人が完全に理解しているとは言い難いです。それにはコミュニケーションの本質が大きく関わります(人間間コミュニケーション参照)。
"I love you." の日本語訳となる「愛しているよ」とは、私たちがあまり口にしない言葉です。あまり口にしない言葉は重みを帯びます。ということで、やたら言わないような重いことを言うくらいの深い愛があると感じさせ、尚私たちの感覚での深い愛とは、プロポーズの時の覚悟のような「あなたを何があっても守っていくという責任を負う」という解釈になりかねません。
"I love you." が重たい意味を持たないということではありませんが、「大好き」程度の感覚でも使われる表現です。また、付き合いの時間を重ねても表現される "I love you." では、挨拶がてらの場合も多くあります。恋愛ではないところでの友人関係や親族間で交わされる場合では、「あなたを仲間として受け入れています」という意味でも使われます。

心理学などで科学的に研究される場合の "love" は、具体的にどんなものなのか定義付けられることが必要です。
取り上げられるものは、passionate love, companionate loveなどがユニバーサルですが、それぞれの定義は通常以下のようになります。
  • passionate love --- 相手を強く求める、性的なつながりのある愛
  • companionate love --- 燃え上がるような性的求め愛はなきにしろ、深い情、信頼、心の通じ合いを伴う愛


  • ついでとして挙げておきますのは、社会学者であるカナダ人のJohn Alan Leeが著書 "Color of Love"(1973)で発表したものです。彼は愛について語られるドキュメンタリー、フィクションなど全ての書物を大昔のものから現代まで調査し、愛の形を6つのタイプにまとめました。
    • 1. Eros <エロス>:惚れっぽいタイプ。理想を追い求め、長続きはしない。(①)
    • 2. Ludus <ルーダス>:恋愛はゲーム、お遊び。二股なんてへっちゃら。 (②)
    • 3. Storge <ストージ>:急に恋に落ちたりしないタイプ。別れても友達になれる。
    • 4. Mania <マニア>: 独占欲が強くて依存的。人生はドラマティックで痛みを伴うもの。 (③)
    • 5. Pragma <プラグマ>: 現実派。深く長続きする恋愛を求める。計算高い面も。
    • 6. Agape <アガペ>:自分を持たないタイプ。嫉妬しない。競争者が出ると諦める。

    恋愛を構成する要素の組み合わせから、愛の種類を考える理論は愛の三角理論をご参照ください。

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    参考:Sexuality Now, Janelle L Carroll, 2007
    以上の内容は2012年7月発行のRomantic Relationship:恋愛関係のページに掲載されていた分に編集を加えたものです。

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