こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

平均顔がモテる訳

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"Do not put all eggs in one basket."
という英語の諺があります。直訳では「全部の卵を一つの籠にしまうな」となりますが、籠がダメージを受けると入っている全ての卵を失ってしまう恐れがあるので、一つにまとめて置いておくなという説明です。諺なので本当に卵を扱っている時のやりとりではなく、1点集中の危険性に対する注意を促す表現です。著者が訳をつけるとすれば、「一点買いはやめとけ」とか「保険を掛けろ」とでもしましょうか。

さて、ここでのお話は字幕講座ではありません。
1点集中の危険性は、生物界全体に通じて言えることであり、私たちは無意識(本能的)にこれを理解しているというお話です。

コアラの個体数減少が騒がれていますが、専門学者はこの原因をコアラがユーカリしか受け付けないことにあるとしています。他のものも食べられたら、ユーカリが減少したとて生き延びることができました。
もう一つ違った例では、大規模な農園で作られるバナナやパイナップルなどの果物。これらは自然な受粉から実を付けているのではなく同じ遺伝子を持った個体をクローン状態で育てているため、商品管理には都合がよくても何かしらの環境的打撃(例えばウイルス感染)に遭うと一網打尽、全滅します。
生物は血統証付きであるほど環境の変化に耐え難く、雑種になるほど生き残りの確率を上げていきます。遺伝子的にいろんなものが混ざるので、言ってみればあらゆる武器や防具を持ち合わせるようなことになります。つまり、末々まで種を続けていける可能性は多様性にかかっており、こちょこちょ固まって交配したり同じものしか食べないことは、卵同様、一撃で壊滅させられる危険があるのです。

人間も無意識のうちにきちんと多様性を重視し、それに従って異性への魅力を認識します。

『平均顔』という言葉を聞いたことがありますでしょうか?これは、何の特徴もない大したことない顔、という悪い意味で使われる表現ではありません。
何世代もに渡って遺伝子が混ざっていくと、顔の特異的要素は平均化されて目立たなくなっていきます。これはコンピューターで何人もの顔を合成させ平均化させることで再現できます。
協力者32人の一人一人の写真と協力者全員の顔を混ぜて平均化した写真を提示し、一番魅力を感じる顔を選んでもらうという実験がありました(Langlois, 1990)。これと同じ形の実験は何度も繰り返されているのですが、毎度平均化された顔『平均顔』が最も魅力的と評価されるという結果が出ます。
多様性に自然に魅力を感じてしまっているというわけなのです。

具体的にどんな要素に多様性を見出し魅力となっているのか調べられたところ、平均化の過程では左右がどんどん対象に近付き、顔の大きさに対する目・鼻・口の比率も均衡がとれてくることから整った顔として認識されるとされます。
人間や動物は胎児として出来上がっていく間左右対称に作られますが、遺伝子異常があったり母親を通して体内に有害物質(アルコール等の催奇性物質)が入れられると、左右対称及び造形の比率が崩されてしまいます(人間の成長参照)。つまり、顔の左右対称性は"健康優良個体"(good genes)を表す指標となっているということなのです(Grammer & Thornhill, 1994)。

整った顔立ちを美しいとする行為はメディアや社会の影響では?とは、nature vs nurtureのいつもの戦いですが、確かにボディーイメージなどはもろに社会的影響を受けます。しかし、Langloisの幼児を被験者にした実験でもやはり左右対称が好きな顔として選ばれ、左右対称性への興味は生物学的・生得的行動であろうとされます。
著者の個人的観察によるものですが、小学生の子供も先生がお化粧をして整えていく場合とすっぴんの場合では、整っている時の方が先生に注目して話をよく聞きます。これは男児女児ともに共通した行動です。この傾向は社会心理学で学ばれる"説得力"の記事でまた詳しく取り上げることにします。

それでは以下、参考までに6つの国別の平均顔です。
私たちにとって白人はどこの国だろうと似たような顔に見え、そして逆に非極東アジア人には、中国・日本・韓国の顔は全員同じに見える傾向があります。なぜかしら?記事:外人は皆同じ顔に見える、で説明いたします。

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