こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

顔で伝えるコミュニケーションの心理

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顔の筋肉を使って作る表情。情を表すと書きますが、必ずしも顔に感情を素直に出す時ばかりとは限りません。
また、どんな表情をどんな時に作るのかは文化によって違いがあります。
こと日本では『にらめっこ』の文化があり、感情を表に出さない遊びや勝負を楽しみます。『笑ってはいけない・・・』では、素直に笑って罰をもらう姿を見て笑う私たち。特殊です。
感情表現(emotional expressions)は文化ごとに社会上適切不適切を分ける決まりがあるとされます。これをを "display rule" と呼び(Ekman)、女性が大きく笑うときに手を口に当てて隠すなどの行為は日本特有とされる(Ramsey, 1981)他、白人文化ではアジア文化に比べ軽蔑の表現は適切とする(Matsumoto, 1994)などが例として挙げられます。

それでも、6つの感情を表す顔は世界的に共通して理解されるようだとしたのはダーウィンです。彼の後、弟子であるポール・エクマンは8つの感情を表す顔が世界共通としています。
・怒り ・喜び ・驚き ・恐れ ・嫌悪 ・悲しみ(Darwin)
 + 
・軽蔑 ・興味 (Ekman)

人間は他人の表情を見るとそこに表れている感情を自分も体験してしまいます。これを感情伝染(emotional contagion)といい、共感(empathy)が生まれます。
感情伝染は女性に特に顕著に現れる(Cappella & Schreiber, 2006)のは、女性の方が顔に表れる感情を男性よりも正確に読み取ることができる(Hall, 1984)特性からだと言えるでしょう。
また、人の表情が伝染して同じ気持ちになるということは、表情の筋肉の動きを同じにしているということです。このことから、顔を先に作るとそれに沿った感情が出てくるのではというfacial feedback hypothesis(Lanzetta et al., 1976)という仮説が立てられています。
ただしこれまでの研究で、この仮説通り顔を作ればその気分になるとされている感情は悲しみ・恐れ・嫌悪・怒りのみとされており、顔を笑い顔にしても喜びの感情は生まれないとのことです(Burgoon & Bacue, 2003)。笑う時は腹から笑う、その効果については笑いの効果で説明します。

表情を作る上でのタイプをまとめておきます。
これらの行為の裏にある本物の感情あるいはその感情の度合いは、意図的に行われていない筋肉の動きで解読され得ます。これはDaiGoさんが観察するような顔の筋肉の小さい動きで "microexpression(マイクロエクスプレッション)" と呼ばれます。
  • 強調 - 大げさに感情を表す
  • 弱調 - 嬉しさ表示を控えめにする
  • 中和 - 悲しさ表示を控える
  • 遮蔽 - 本心を隠す
  • 模擬 - 本心ではないが期待されている感情を表す


  • 目だけを使ったコミュニケーションだと、アイコンタクト・目線回避・瞳孔拡張があります。
    アイコンタクトは文化によって結構な違いがあり、欧米人の間ではしっかりと見つめ合って会話されるのが信頼の証である一方、日本の場合だと相手をじっと見ることは挑戦的と取られることが多かったり、あるいは大人としての対人マナーが未発達である動作としてとられます。
    目線回避は話の内容に興味がないことを表すしぐさとなります。
    その逆に興味があることを示すのが瞳孔拡張です。猫の目を観察すると分かるように、うれしい・楽しいときは黒目がまん丸になるのと同じです。最近の研究では、瞳孔拡張が信頼度と関係していることが発表されました(Kert et al., 2015)。同じ人種間に限り開いた瞳孔を伝染できる相手には、信頼度が上がります。

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    参考:The Interpersonal Communication Book, Joseph A. DeVito, 2009

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