こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

心理学:スキーマ (schema) とは

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schema(スキーマ)とは、日本語では一般的には「イメージ」という言葉と似たような意味で使われていますが、各事物についての心的形付けのことを言います。 法律の場などで使われる定義としての形付けではなく、個人の中に出来上がるものです。つまり、常に人と同じとは限りらないということです。
例えば、『鉛筆』のスキーマは『芯があって字を書く道具で、書いたものは消しゴムで消せる』といった具合になります。
これに対し『大人』といった言葉では、小学生に『大人』って何ですか?と質問すれば、『おばさん、おじさん』、35歳の男性に同じことを聞いたら『責任感と指導力がある人』のような違った答えが返ってくることもありえます。

スキーマの形成は生まれてすぐから始まります。
母親が「鳥さん来たねぇ。」と、幼い子が鳥を視覚でとらえている時に言います。
「鳥さん来たねぇ。チュッチュって聞こえるかな?」
言葉を覚え始める頃の幼児では、トリという音より、チュッチュという音の方が拾いやすく、指差しながら「チュッチュ」と繰り返すのを想像できると思います。
この幼児の中で、チュッチュ(鳥)はどんな形か、どんな色か、どんな音で鳴くかテンプレートが作られます(この作業は "organization" と言います)。できたものがスキーマです。
スキーマは目に見える物体だけに限らず、抽象的なものや行動ついても作られていきます。行動のスキーマは特別に分けて "script" と呼ぶ場合があります。

最初にすずめを見てチュッチュと認識したところに、今度はリスがやってきました。形は違いますが色と鳴き声はほぼ等しく、幼児はリスを指差して「チュッチュ」と言います。この認知発達の過程は "assimilation:同化" とされ、新しい情報を加えて既にあるスキーマを拡大することを言います。

母親がここで「チュッチュだねぇ」と認めれば、まだ鳥とリスはチュッチュの括りからそれぞれとして独立しません。
母親が「同じチュッチュだねぇ。でも今度はリスさんだよ。鳥さんとどこが違うかな?」といった風に、細かい情報の取り込みを促すことを続ければ、同じチュッチュでも『鳥さんは空を飛んでくる』『リスさんは木の肌を這っている』というように、幼児は鳥とリスのテンプレートを別にしていきます。この作業は "accommodation:適応" と言い、新しい情報によってスキーマを修正したり上書きしたりすることです。

大人になってからだとスキーマの書き換えは難しく、そのため特定のものへの差別意識の源が幼少期に作られてしまうと、修正に難を要します。こちらは、差別:本音と建て前で説明します。

スキーマの形成は環境の違いに大きく影響を受けます。
例えば、日本であればホットドッグのスキーマは(コストコの影響で修正されていきている流れはあるかもしれませんが)、基本的には『あまり食べる機会のないおやつで遊園地とかで売ってるやつ』なんていうものだと思います。しかしながら、アメリカであれば『手軽に食べるしBBQでも作って食べる』というスキーマに変わります。
国が違えばレストランでの振舞い方のスキーマも変わってきますし、国家的宗教が違えば生と死についてのスキーマも変わってくるわけです。
このように、あらゆる物の形や意味は個人によって異なるため、社会をどう見るかという認知とその中での生活行動は世界万人老若男女単一である、とういことではなくなるのです。
この事実はコミュニケーションに大きく作用します。説明は Interpersonal Comunication コミュニケーションのページにありますのでご参照ください。
また、それぞれの物のスキーマが万人に共通ではないという事実は、夢占い辞典のようなものが意味をなさないことを示唆します。夢に意味があるかについては 夢に意味はあるのかで説明します。

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