こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

社会的認知

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『社会的認知(social cognition)』とは何のことか。
これは自己が社会に生きる中で必要な世界の把握に関する心的働きのことを言います。
社会心理学において、教科書では第一章で社会科学とは何かが提示された後に第二章で心理学のどの分野にも共通する科学に必要な研究の運び(scientific methods)が説明され、第三章になると『自己』についてかもしくはこの社会的認知についての学習が始まるのが通常です。
Aronson他による social cognition の定義は、
"how people think about themselves and the social world, or more specifically, how people select, interpret, remember, and use social information to make judgments and decisions"
とされています。訳を付けると、 "人が自分と社会空間についてどう捉えるかということ、または更に詳しく言うと、判断や決断に必要な社会的情報をどう選択し、解釈し、記憶し、使用するのかということ" になります。 
これでもまだなんとなくピンと来にくいのですが、連なる記事において理解を深めていくことにします。現在の時点では、"「自分の生きている世界はこういうものだ」という自分の頭の中での把握あるいは認識" として覚えておくとよいのかなと思います。

例えばカソリック教を信じるある個人が、全ての始まりは神によって創られ、人間の根本的な罪(Wiki:七つの大罪)はイエス・キリストが犠牲となって洗い清められ、私たちは生を得ていると捉えて生活していたとします。
一方、ある10歳の日本人少女は、河原のBBQでタバコの吸殻をポイ捨てしたお父さんを見て、「川の神様に怒られるよ!」と注意をします。
この二人にとって流れている時間は同じでも、自分たちが存在している空間の定義や善悪の定義はそれぞれ異なり、体験する全てのことは自分の中だけにある意識を使って意味付けをします。
これをベースに『クローン人間開発』や『鯨を食べること』などの国際的に注目されるテーマの他、例えば『年寄り』『女性としての美』などの判断を集団で行うと考えてみてください。言うまでもなく、 満場一致は極めて難しくなります。判断基準が異なるためです。

判断の基準を決める自分だけの意識。それがどこで確立されたのかをたどると、それは生まれ落ちて育ち生活する社会の中となります(家族も自分外の環境なので社会とされます)。そこから物事の意味付けが教育されていきます。
箸はどうやって持つのかとか、高校受験の当たり前さとか、住む社会に順応して生き残りを図る私たち故これらを学んでいくわけです。その工程や、情報の使い方の癖、考え方見方の傾向などは "スキーマ" "ヒューリスティック" "文化" として見ていきましょう。社会的認知の要素となるものたちです。

2はスキーマ
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参考:
Social Psychology, David G. Myers, 2006, McGraw-Hill
Social Psychology, Elliot Aronson, et al., 2009, Prentice Hall
再編集:2016年3月30日

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