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こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

差別:本音と建前

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Image: THE BLADE
2014年11月23日、アメリカ・オハイオ州のクリーブランドの病院で12歳の少年は息を引き取りました。
彼が公園でおもちゃの拳銃を人に向けたりして遊んでいたところを通報され、駆けつけた警察官によって撃たれたのです。

この事件をめぐって、社会がデモを起こしています。白人警官が黒人の車を頻繁に止めて職務質問したり、必要のない暴力を加えるなどの差別行為は年柄年中起こっているわけで。

アメリカの各管轄は警官を雇う際に人種差別をする人間ではないかどうか適正テストをやらせればこんなことは起こらないのでは?
と、警官の採用試験を受けたことのあるアメリカ人S氏に申したところ、
「自覚していない部分の差別意識が問題なのだ」
と返されました。
そうなのです。差別は態度の一つで、態度は表に出すもの(explicit attitude)と、意識にはなかなか上がってこないもの(implicit attitude)があります。

さて、この "explicit attitude" と "implicit attitude"、日本語の教科書でどう訳されているか分からずなのですが、それぞれ「顕在意識」と「潜在意識」としてしまっていいかしら。つまり、建前と本音みたいなことになります。
建前と本音の発達を考えてもらうと分かると思うのですが、子供のうちは本音が全てで生きていますよね。本音であるimplicit attitudeの方は心の底に根付き、幼い頃から抱える観念です。ですので大人になってもなかなか摺り返えるのは難しいです。そして、本音ばかりだと社会はうまく渡れないことを学習し始めると、あるいは建前という行為を選択する場面も多くなっていきます。explicit attitudeを形成していきます。こちらの方は意識的なものですので、改めていこう・修正しようと自覚すれば変化させることはimplicit attitudeより容易です。
implicit と explicit は同時に抱えていても、別々の違う態度を示すことがあるわけです。表向きは人種・男女およびセクシュアリティーの平等を掲げていても、判断などに影響してくる自分でも認識できない意識では偏見が身についてしまっている可能性があるという。

少年を撃った警官の黒人への偏見がどうだったかは、裁判にも掛けられないそうなので(だからこそデモが起こっているのですが)永遠に分かり得ません。
S氏の指摘した、自覚なき差別意識であるimplicit attitudeは、個人の経験によって形成されるとされています(Laurie Rudman et al., 2007)。物心つくつかないのうちから、自己の周りで家族・メディア・教育施設から差別行為あるいはそれを促すメッセージが送られていれば、自己には偏見や差別がいい悪いの判断より前にデフォルト設定的にプログラムされます。
が、一方で外来種のみならず特定のものに対する恐怖は遺伝子学的に説明されるものではなかろうか、とはいくつか研究があがっており、これについては進化生物学を取り入れながら後ほどまたアップすることに致します。

先に出てきた適正テストの件ですが、自分では認識できない implicit attitude を見分けるテストがあります。
ハーバード大学が研究がてら行っているもので、人種だけに限らずあらゆるimplicit attitudesについてを調べることができます。S氏にも伝えておきました。Project Implicit(旧:Implicit Association Test)とされている大変有名なものですので、興味がある方は覗いてみてください。
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