ホルモンについては、男性・女性ホルモンや成長ホルモンなど特に認知度が高いと思われます。 そして、最近急激に耳にする頻度を増やしているのが、"オキシトシン:oxytocin"と呼ばれるホルモンです。一体これは何なのか?心理学でも深く研究されるオキシトシンについてポイントを追って紹介したいと思います。
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- 種類と役割 オキシトシンは栄養素ではありません。身体の一部を構成するコラーゲンと同じ種類でもありません。 オキシトシンは視床下部というところで作られ下垂体から血中へと流されるホルモンで、脳内で神経伝達物質の役目もします。
- Love Hormone
- 男性とオキシトシン 男性の場合でも、授乳こそしませんが子供ができるとオキシトシンのレベルは上がります。
- 顔の認識 オキシトシンが絆(bonding)に関与しているということは、人間の社会的行動を解明する鍵を握っているのではないか・・・と研究が進められました。すると、2009年、大きな研究の成果が上がります。
- 自閉症との関わり 自閉症は社会性に大きく欠けていることが特徴であるため、オキシトシンと自閉症の関係についての研究に道が開かれることとなりました。
- ストレスと戦う ストレスホルモンであるコルチゾルを抑えるオキシトシンの働きについては、少しずつアップしていきます。まずはストレスに対する男女間での違いについてから。
ホルモンの作用として最も重要と言えるのは、女性の出産との関わりです。oxytocinとはギリシャ語が語源で"quick birth"を意味し、つまり時間のかからない出産のことだそうです。
オキシトシンは分娩時に子宮の収縮を促し、胎児が外界に出てこられるように働きます。更に乳腺を刺激し授乳を可能にします。

動物の場合(実験ではprairie voleと呼ばれる哺乳綱(ほ乳類)に属する動物の分類群で、マウス、ラットなど、いわゆるネズミの仲間が属する。
weblioより齧歯類動物)はオキシトシンに似たバソプレシンというホルモンが血中でレベルを上げると、オスは新しいメスより交配を終えた相手を選び、一夫一妻を形成します(Lim et al., 2004)。
オキシトシンは男性ホルモンであるテストステロンと対極にあり、交配相手を探している独身時代はテストステロンに溢れていますが、結婚して子供ができるとオキシトシン効果で家族に献身的になるわけです。
マウスではなく人間を使ったスイスでの実験です。点鼻(鼻スプレー)によるオキシトシンの投与で、非生物の記憶には変化はなく、顔の記憶のみ能力が向上(Rimmele et al.)。顔の認識や記憶能力は、人間関係を芯とする社会的行動には必要不可欠です。
次いで2013年、相貌失認(そうぼうしつにん):prosopagnosia と呼ばれる、顔が認識できない病を持つ患者にも実験が応用されました。オキシトシンの鼻スプレーで顔認識力が上がり、2,3時間は効果が持ったということです(Nasal inhalation of oxytocin...)。
2013年、University of New South Walesによって行われた研究では、7歳から16歳の自閉症患者に点鼻でオキシトシンを投与したところ、社会性の欠如には何も変化が現れなかったとする一方、Yale Universityの行った研究では、効果があったと発表されています。
オキシトシンはマッサージ(touching)や日本式のお風呂の利用時にも分泌するとされています。
グループ合唱に参加することや安らぐ音楽を聴くことも、オキシトシンのレベルを上げるとされます(2003, 2009)。アメリカの奴隷時代に黒人たちが教会で行うゴスペルは、オキシトシンを出せるやっとの機会だったかもしれませんね。
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オキシトシンと社会的行動との関連性から、この先も心理学の各分野で多くの研究が進められ、新しい発見が発表されていくことになると思います。
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