こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

信じると効く - プラシーボ効果

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信じることや思い込みが身体的な変化をもたらすことがあります。
科学では、本来何の効果成分を含んでいないのにも関わらず、効果を信じていると摂取後に身体的反応が表れる現象のことを "placebo effect"(プラシーボ効果)と呼びます。
健康情報番組などで野菜や処方薬について医師が、「身体に良いと思えば効果が更に上がります」と説明していることの根拠となります。

この度行われた実験(Espay et al.)はパーキンソン病患者が被験者となったものです。

と、ここで一端、パーキンソン病を少し説明しておきます。
パーキンソン病とは運動障害の代表的なもので、大脳基底核においてドーパミンが不十分であることから起こります。
これはメカニズム的には大脳基底核(basal ganglia)を構成する黒質(substantia nigra)の神経細胞の機能不全か死滅による結果ですが、原因は今のところはっきりしていません。
ただ、ストリートドラッグMPPP(別名: "China White", "synthetic Demerol")は黒質の神経細胞を崩壊させるため、使用後すぐにパーキンソン病を発症することは分かっています。
症状は手が何もしなくても震えるようになることから始まり、やがて筋肉が硬直して動きが遅くなります。
薬剤治療ではL-ドーパというドーパミンの素になるものが試されます。

さて、実験では被験者を二つのグループ(仮にAとB)に分け、薬剤と偽って食塩水を使用しました。
グループAの一度の服用量は100ドル(日本円でおよそ1万円)掛かるもの、グループBの方は1500ドル掛かるものと告知しておきました。
AB同じ、パーキンソン病に何の効果も出さない食塩水を服用したわけですが、どうなったか・・・。
値段が高い方のグループBでは被験者の運動能力が28%も改善したという結果を出しました。

この実験結果から分かることは、人間には「高いから効く」「高いのには訳がある」という認識あり、期待が働いているということです。
いつどこでだったか忘れてしまったのですが、化粧品は原料関係なく高くすればするほど売れるんだと、その業界の方がおっしゃっていたのを思い出しました。 もうそうなると物質自体は何の器質性も有さず、私たちがその物体に意味や価値を与えているに過ぎない?ということになるので、究極、除霊の高い壺みたいなものも病んでたのを元気にさせるといったようなプラシーボ効果を表してしまうことがあるわけですね。

もとい、大きさや色の認識もプラシーボ効果に一役買うということです。一般に赤やその他温色では興奮剤としての効果が上がり、青など冷色では鎮静剤としての効果があがるとされています。ただし、文化によってばらつきがあるということです(Dolinska, 1999)。赤は土地によっては『死』を意味する色であったりなど、文化によって色のスキーマが異なるためと考えられます。

プラシーボ効果の脳科学的メカニズムについては、2007年の研究で、偽薬(プラシーボ)が側坐核(そくざかく: nucleus accumbens)を活性化するとしています。側坐核は報酬系の中心部でドーパミンを出すところです。これにより本物の薬で期待される効果を発揮させるとしています。

尚、同じものでも注射と錠剤では、注射の方が偽薬効果が高くなるというの研究結果(ドイツ)もあります。注射では恐怖感と痛みを伴いますが、これら自己が犠牲になった場合、報酬への期待はそうでない場合よりも大きくなるわけです。この件に関しては更に応用が広がりますので、また別のトピックで説明いたします。

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