こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

人間の欲求段階

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人間は生涯を通して成長及び変化をし続けるもので、その特徴は主に生涯心理学(発達心理学)で研究されます。 研究には生物学的アプローチ(例:受精卵・胚・胎児)他あるわけですが、ヒューマニスティック(人間性心理学的)アプローチでは、Abraham Harold Maslow(以降、"マズロー")が"hierarchy of needs"(欲求段階)を説き、人間が心の安定した個人に『成る』過程での各欲求の出現と、それらが満たされる必要性が主張されます。 この説は、個人のワークパフォーマンスを最大限に引き上げるための基礎として、産業・組織心理学でも応用されます。

Maslow's Hierarchy of Needs

- ピラミッド上段から -
・自己実現欲求 --- 道徳心・創造性・受容性
・承認欲求 --- 自他からの尊敬
・愛情・属性欲求 --- 友人・家族・恋人
・安全欲求 --- 身を守るもの(仕事含む)
・生理的欲求 --- 睡眠・排泄・性欲

- ピラミッド下段から -
生理的欲求は脳の原始的な部分で管理され、むしろ抑えることは不可能です。直接生存に関わるこの欲求が満たされない状況、災害時や虐待では、極度の不安および不快を経験します。

安全欲求は、生理的欲求が満たされた上で自身が存続するのに必要なもの、つまり経済的安定性や保健性への欲求となります。

愛情・属性欲求は、人間が社会的動物であるが故の欲です。つまり、野生界のような生理的欲求と安全欲求の満たされ方が不十分では、誰かと信頼でつながれたいのような欲よりも、何しろ生き延びなければならないという欲の方が先行します。上の欲求が満たされた自己は、社会とつながることによって安定します。全く知らない社会に移動したり(カルチャーショック参照)、社会と断絶された空間では"自己"を見失う危険性もあります。

ここまでの欲求は満たされることによって解消するとされます。 以下の二つ(ピラミッドでは上二段)の欲求は満たされるほどに増していくとされます。

承認欲求は、自己の功績を認めてもらうことに対する欲です。やったことに対して報酬が得られることで満たされます。報酬とは物質的なことだけに限らず、心理的なものも含みます。つまり、「自信がついた」「気持ちがよい」のような不可視のものでも構わないわけです。

自己実現欲求は、これまでの欲求がほとんど問題なく解決されていなければ、満たされることがないとされます。この最終段階の自己実現とは、なりたかった自分への到達となります。しっかりとした自尊心と安定した生活様式を得て個人が『成る』と、他に対する奉仕もしくは自己犠牲にも視野が広がっていくなどして、寄付を含めるボランティア活動が盛んになったりします。仮に経済的に大成した個人でも、下の段階のどこかで欲を満たすのに大きな問題があった場合では、何かしら執着が残ったり、自他の受容力に欠けるなどということがあります。

以上、マズローの5段階欲求でした。
尚、事実として付け加えておきますが、マズローの5段階欲求含むヒューマニスティックアプローチは、先も述べたようにパフォーマンスの向上のための"比較的既に出来ている人"用であって、深刻な精神疾患などの解決には役に立たないという批評があります。

1は自尊心について
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