こちらのページは特集(Special Issues)の一つです。専門用語頻出による読み辛さにご注意下さい。

夢は何でできているか

Written by on
体験したことを復習するときの産物にすぎない、というのが夢だと言うなら、体験したこともない、空を飛んだりする夢を見るのは何故なのか・・・。

これは、ジェットコースターや飛行機に乗ったときの高さとふわっとする感覚の体験と、空を飛んでいるような映像の記憶を組み合わせると出来上がります。ちょうどパソコンでそれぞれの素材を集め、合成作品を作るのと同じようなことになります。

しかし、せっかく夢の中だというのに上手に飛べない、という人がほとんどです。飛ぶ行為についての素材に乗り物によるものが使われているためです。自分の身で飛ぶ感覚が脳に存在していないのですね。高低や速度のコントロールが身についていない(と考えている)ため、それが夢の中でも認知機能の慣性として反映されていると考えられます。よって、恐らく、ハングライダーやスカイダイビングをマスターしている人では、夢でも自在に飛べる方が多い可能性があります。

様々なことについて、実際に体験しなくても仮想現実(バーチャルリアリティー)でも脳は学習が可能です。ゲームセンターに置いてあるKONAMIのスノーボードや自動車教習前のシミュレーター機などを試したことがある方は理解できると思います。ディズニーランド等の体感型アトラクションは規模も大きいですので、インパクトの強い体験です。また、イメージトレーニングで観念を書き換えることもできます。他人の観察によっても学習を行うことができます(social learning theory)。それは学習のトピックでまた詳しく取り上げることに致します。
何しろ、自分の脳から飛び出す夢ですから、コントロールして飛べることを脳に知らせれば可能になるわけですね。映画Matrixのセリフ("Don't think you are. Know you are.")みたいですけど・・・。

夢は情報の断片を組み合わせ、感情で色づけをし、全体としてなるべく意味が通るようにすることで認識を試みる認知機能の働きによって作られるものですので、素材を沢山集めればいろんな作品が作れることになります。但し、素材の引き出しはランダムですので、ストーリーの流れまでは決められません。
しかしながら・・・、寝ている間の刺激も情報として夢に影響することは明らかになっており、これを利用して少しは何とかなるかもしれません。記憶および感情と結びつきの強い『匂い』を使った実験では、睡眠中いい香りに囲まれれば良い夢を、悪臭では悪い夢を見ることが分かったそうです(National Geographic)。人によって特定の匂いと結びつく記憶や感情が異なりますので、いろんな匂いを試して記録し、自分なりの傾向を見つけるのも楽しそうです。

刺激とその解釈は人によって異なる・・・ということで言及しておきます。
「こんな夢を見たのですが、これはどういう意味ですか」と他人に尋ねられている相談をよく目にします。
夢に出てくるものが印象的だったとしても、それに対する概念はその個人の脳が有しているものなので万人にとって同じ意味をなすとは限りません。つまり、ある特定の物事は絶対的な象徴性を有さないことになります。
仮に、相談者が白髪の老人に追いかけられる夢を見て、夢辞典的なものには「白髪の老人」というワードがあり、その意味・解釈を「老いること」としてあったのなら、相談者に対する答えは、「老いることから逃げ出したい、恐怖のあらわれです」といったところになるでしょうか。 人間、老いることがうれしくて仕方ないという人は少ないので、相談者は「最近お肌のたるみが気になってて。当たってます!」などの心情に導かれます。
それが真実でなかろうとも、相談者にとっては何だろう何だろうと思っていた自分の夢に意味付けができたこと自体で心がスッキリするという効果が得られます。このスッキリ効果を求める心理のおかげで夢判断商が栄えます。 性格占いや種々の占いでも同じことですが、これらは心理学で取り扱われるものでは甚だありません。むしろ、これらの商売人が上手に心理学を使ってお客の心を掴んでいるのです。

3は夢豆知識
1 2 3

Share this on... 
Page Top
Home



SPECIAL ISSUES